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パトラッシュが駆ける!

女性の歳は 

2014年05月23日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

この時期、新たに入部する生徒が多い。
新一年生である。
彼らは、黄色い帽子を被り、歓声を上げ、
廊下を競うように走り、教室にやって来る。

「囲碁か将棋か?」
入口で先ず、その志望を聞く。
「将棋です」
男子が多い。
「囲碁です」
女子が多い。
「両方です」と言う者は、さすがに居ない。
上級生になると、時たま居るのである。
二足の草鞋を履く者が。

私達、コーチ陣は、忙しいことになる。
T小囲碁将棋部の、将来を担うであろう、貴重な人材である。
しっかりと、育てねばならない。

将棋だと、駒の動かし方も、覚束ない。
囲碁だと、石の取り方さえ、わかっていない。
初歩の初歩から、教えねばならない
上級生に、手をかけている暇はない。
当面は、新入生の面倒見に、忙殺される。
二人同時に相手をする、二面打ちはざら、
時には三面打ちまでやらねばならない。

「よろしくお願いします。この子の保護者です」
親が付いて来ることがある。
幼いわが子が、クラブ活動に加わると聞き、
気になるのであろう。
児童の背後に立ち、様子を見ている。
「あっち行ってて」
生徒がこれを、手で払いのける。
A君、一年生ながら、既にして、自我をあらわにしている。

教室には、世話役のお母さん方が、何人か詰めている。
皆さん若い。
その中で、A君のお母さんだけが、少し異彩だ。
顔の艶に、ややかげりがある。
鼻から頬へ伸びる、法令線が目立つ。
他のお母さんと比べ、明らかに、年長だ。
しかし今や、晩婚時代だそうだ。
高齢出産も、珍しくないと聞く。
歳かさの母親が居たとして、これを奇異の目で、眺めてはいけない。

いや、待てよ・・・
もしかしたら、お祖母さんであろうか。
先ほどは「保護者です」と名乗った。
母親なら「母です」と言うだろう。
さあ、わからないことになった。
お祖母さんとすれば、今度は逆に、異例に若いことになる。

 * * *

私のサロンにも、このところ、新入生が相次いでいる。
こちらは、大人である。
それも、いい歳をした、おじさん、おばさんばかりで、若い者は来ない。
中年世代も来ない。
もちろん、わかっている。
働き盛りが、昼日中から、碁などに、うつつを抜かしては居られない。

女性に歳を聞くのは、失礼とされている。
失礼以前に、私は、他人の年齢になんぞに、興味がない。
相手が誰であれ、何歳であれ、余念を抱かず、ただ碁を教える。
それが私の使命だ。
と言うのは表向きで、女性の歳を聞いたところで、
では、デートに誘い・・・
なんてことには、発展しないからだ。

「私はもう、おばあちゃんですから」
C子さんが言った。
「いえいえ、お若いですよ」
お世辞ではない。
血色はよく、顔に皴もない。
テニスをやっているとおっしゃる。
身体の動きも敏捷だ。

そして何より、物覚えがいい。
私の教える、碁の要点を、素早くメモに取るなど、
人にものを教わるについて、そつというものがない。

ある女流プロ棋士の話になった。
杉内寿子さんは、還暦近くになり、女流としては、
初めての八段に昇段した。
だから、五十、六十は、まだ伸び盛り、希望を持って、
邁進して下さいと言った。
「そうですか、じゃあ、頑張ります」
C子さんが、その時初めて、自分の歳を言った。
「還暦を過ぎていますけど」と。

私は、これに驚いてしまった。
とても見えない。
「五十くらいかと思いましたよ」
「女は、お化粧と服装で、随分と変わりますから」
だそうである。

私は、女性の年齢というものが、さっぱりわからない。
そもそも、洞察力と言うものが、からきしだからだ。
行住坐臥、節穴のような目で、ただ、ぼんやりと、人を見ている。

 * * *

私の友人、山靴は、仕事で海外へ行くことが多かった。
知らない国に入るや、彼は、その地で円滑に過ごすために、
幾つかの言葉を、教えてもらい、覚えることにした。
その一つが「お嬢さん」だ。

女性に話しかける時は、誰彼かまわず「お嬢さん」と呼びかけてしまう。
呼ばれて、悪い気のする女性は居ない。
言葉の不自由な、外国人のやることだ。
それが的外れであっても、笑い、聞き流してもらえる。

韓国のレストランで食事中に、彼は、紙切れを落した。
これを、隣席のお婆さんが、拾ってくれた。
「アガシ、カムサハプニダ」
(これ、伝え聞きだから、発音は正確でない)
礼を言ったら、そのお婆さんが、満面の笑みを浮かべた。
何事か言い、手振りで、その紙を、落すしぐさをした。
もう一度、落して下さいと、そういう意味であろう。
「アガシ」とは、それほど嬉しい言葉であるようだ。

 * * *

これしかし、外国だからいいが、国内でやったら、
嫌みになりかねない。
愛嬌も、時によりけり、相手によりけりだ。
私は、とりあえず、今度、A君の保護者さんに会ったら、言ってやるつもりだ。
「お母さん」と。
お愛想も、この辺が、相場であろうと思われる。



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目が・・・

パトラッシュさん

我太郎さん、何時もありがとうございます。
人を観察するのが好きですが、女性の年齢だけは、
当たったことがありません。
もしかしたら、私の中にある邪念が、見る目を曇らせているのかもしれません。

2014/05/27 11:50:38

年齢

我太郎さん

私も人の歳は気にしません
見ぬく目もないし
登場人物それぞれの人となりが上手く表現されて、一人一人想像しながら拝読させて頂きました
C子さんの件いいですねえ
読み返しました

2014/05/27 07:44:14

変ではありません

パトラッシュさん

ばばたまさん、
「お嬢さん」と呼びかけて、怒られるとは限りません。
すべては、呼びかけ人の「人」に、かかっていると思います。
わかりやすく言えば「人徳」です。
同じ冗談を言っても、通用する、しない・・・
人間とは、何と面白い生き物でしょうか・・・

2014/05/23 20:42:52

私って変?

さん

私より若そうな方には今でもお嬢さんと言ってしまいます。
スパーやデパートの売り子さんにでも50くらいの人にでもお嬢さんと言ったら怒られるのかな〜。
昔は皆お嬢さんだったのでは(笑)

2014/05/23 17:32:27

過ぎたるは・・・

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
その気持、よくわかります。
見え透いたお愛想は、逆にバカにされたような、そんな印象を受けますものね。
言う方の、品位の問題もありますし・・・
だから、お愛想なんて、ただ言えば良いというものではなく・・・
私は、滅多なことでは、発しません。
だから、私の語るところは、常に、ほぼ真実です。
(これを言いたかった)(笑)

女性を怒らせると、怖いです。
その恨みは、長く尾を引きますから。

若い呼称を選ぶに、如くはないようです。

2014/05/23 15:53:09

興味深々(笑)

さん

昔、母は妹の長女の検診に付き合って「お母さん」と言われかなり気をよくしていましたが、当時48歳くらいでしたから私には理解不能です(笑)

私は30代後半で魚屋のおじさんに「お姉さん」と言われて不愉快になって買わずに帰った事があります。

親娘でも感じ方は違いますね〜

でも、どちらか不明な場合は若い方をとった方が無難だと思いますよ。(笑)

2014/05/23 15:20:54

アンニョンハセヨ

パトラッシュさん

おお、マリーアガシは、
韓国語が達者なのですね。
投稿する前に、監修してもらえばよかった・・・
(私は、からきしなもので)

A君の保護者さん、どう反応するでしょう。
満面の笑みに、なりそうな予感がするのですが・・・

2014/05/23 15:10:35

オッパー アンニョンハセヨ

さん

アガシはお嬢さん。カムサハプニダはカムサハムニダではないでしょうか。ありがとうございますの意味ですよね。
韓国ドラマを10年間見続けたので簡単な韓国語はちょっと覚えました。
因みに上のタイトルはお兄さんこんにちはです。アジョシおじさんの意味ではないです。
お母さんといったらこのA君の保護者さんはどんな表情になるでしょう。後日談をお願いします。

2014/05/23 14:36:58

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