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パトラッシュが駆ける!

続・間の悪い 

2014年06月18日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「せっかく、一点入れたのに、二点取られちゃって・・・」
妻は、試合の一部始終を、見ていたらしい。
帰宅した私を見るなり、日本、負けちゃったわねと、言った。

「本当に、知らないの?」
「知りません」
「話題に出ないの、会場で?」
「将棋大会だもの、みんな、それどころじゃない」
「電車の中で、誰か話してないの?」
「静かなもんです」

そりゃ、試合の結果くらい、なりふりかまわず聞けば、
誰かが教えてくれたであろう。
しかし私は、それをしなかった。
聞くのが怖かった。

我が子が、難関校を受験したようなものだ。
合否は、五分五分だと、目されている。
わざわざ、合格発表を見に行けば、そこに、載っていない気がする。
知らされるまで、待とう。
そうしたら、知らせてくれる電話が、待てど暮らせど、かからなかった。
と言うようなものだ。

後から考えると、街も電車内も、妙に静かであった。
日本が勝っていたら、少し様相が違ったはずだ。
人々はもっと、喜色に溢れていただろう。
きっと、敗れたサッカーを、誰もが、話題にしたくなかったに違いない。

期待が、先行し過ぎていた。
「勝たねばならない」が「勝てる」から「きっと勝つ」にエスカレートしていた。
相手は、FIFAランキングでも、日本より上位なのである。
それなのに、「必勝」の大合唱になっていた。
メディアに引きずられ・・・と言いたいが、メディアは大衆に、
迎合しているだけだ。
「日本、危うし」なんて、景気の悪いことを書いたら、
そのスポーツ紙は、売れるわけがない。

楽観論に満ちた時が、一番危ない。
株がそうだ。
全員が「上がる」と言い出したら、そこが天井となる。
私達は、それをやってしまった。

 * * *

私は、先ほどまで、文部科学大臣杯、小学生将棋大会の会場に居た。
そこは、社会と隔絶した空間であり、将棋の駒音と、
チェスクロックを叩く音だけが響く、異様な世界であった。
時たま、歓声が上がる。
本来将棋は、礼に始まり、礼に終わる、
慎ましやかなゲームなのだが、そこは小学生だ。
つい、感情が露わになる。
喜色満面の子が居る半面で、負けて、泣き出す子もいる。

私は、戦っている生徒達を、次々に、見て回っていた。
終局しても「どうだった?」とは聞かない。
勝負の結果は、顔を見れば、すぐに分かるからだ。

「次、五回戦だ。今度勝てば、優勝だ」
A男が言った。
確かに、彼のチームは好調だ。
対局カードには、○がずらりと並んでいる。

五局目も、勝った。
やったぞ、優勝だと思ったら、五連勝チームが三校あると知らされた。
その三校により、スイス方式のトーナメントが争われる。
その準決勝で、我が校は敗れてしまった。

三将のY子が勝ったものの、主将のT子、副将のA男が敗れてしまった。
やんぬるかな、三位である。
しかし、三位だって表彰盾がもらえる。
明日の全校朝礼で、校長さんが、発表し、その栄誉を称えてくれるだろう。

「みんな、よくやりました」
私は、九人の生徒を集め、今日のまとめを行った。
大人なら「総括」だが、子供相手に、難しい言葉は使えない。

「惜しい敗戦、悔しい負けもあったけど、今日の経験は、
必ず今後のためになります。
みんなの力が、確実に上がっていることが、よくわかりました。
先生は嬉しいです。
さあ、また来週からまた、頑張りましょう」

照れ臭かった挨拶も、度重なることにより、慣れた。
最近は、スムーズに、言葉が出るようになっている。

「ありがとうございました」
九人の生徒と、その父兄が私に向かって一礼し、その声が、
大きく会場内に響いた。
将棋の良いところは、ここだ。
彼らは、同じ年頃の生徒に比べたら、はるかに礼儀正しい。

私は、果報者だ。
長いこと、金儲けにばかり、奔走した人生であった。
それが、晩年に至り、こんなことになった。
人に感謝される人生。
そんなものが、この身に訪れるとは、思わなかった。

今だって、何かの間違いではなかろうかと、思ったりする。
この粗忽者が、先生と呼ばれている。
あまつさえ、自分でも偉そうに、それを、主語に使っている。

 * * *

さて次の試合、対ギリシャ戦である。
ここも、ランキングは、我が国より上であり、難敵に違いない。
それなのに嗚呼、またしても「勝てる」の合唱が、
テレビのスポーツ番組に溢れている。

初戦が勝負と、皆さんが、開幕前に、言ったではないか。
その初戦に、失敗している。
決勝トーナメント進出は、ほとんど絶望のはずだ。
それでもまた、性懲りもなく、希望的観測をやっている。

私だけは、少し醒めて見ることにした。
いやもちろん、試合を見ることは見る。
過度な期待を抱かないだけだ。
勝てばもうけもの。
力を出し切って負けたら、それで仕方ないではないか。

「おーい、旅に出ないか?」
友人の一人が、先日来、言って来ている。
「大人の休日フリー切符」というのが発売され、六月のこの時期、
格安の料金で、東日本各地の鉄道を、乗りまくることが出来る。
「そうだなあ、行こうかなあ・・・」
私は、煮え切らない返事をしている。

旅先で、テレビくらい見られるであろう。
しかし、初戦の躓きがある。
私が、他のスケジュールを優先し、それで日本は敗れてしまった。
妻にも言われた。
「あーたが見なかったからよ」

また同じ轍を踏むのもいやだ。
旅に出ず、観戦一途に過ごした方がいいか・・・
それを今、考えている。



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この際

パトラッシュさん

喜美さん、
へえ・・・
鰻占いなんてのが、あるんですか?
なになに、それで優勝ですって・・・
こうなったら、鰻頼りですね。
何でもいいから、そうなってほしいものです。

2014/06/18 19:02:08

仁徳

喜美さん

貴女に人徳がみなぎっているから
生徒が付くし 見習って礼儀も良くなると思います 見よう見まねと言いますもの

この間 テレビで 鰻占い見ました
そのウナギはオリンピック会場が
日本と当てたそうです
今度も占っていました
初めが負けるところに入りました
其れから色々廻って勝方に最後入りました 苦戦の結果優勝ですって
そんなものですから貴方が居ても居なくても勝つ時は勝 負ける時はテレビの前で大声あげても負けると思います
お友達とご一緒してください

2014/06/18 15:34:11

冥利に尽きる

パトラッシュさん

風香さん、
私に、人徳も力量もありません。
たまたま、将棋の好きな生徒が、集まって来ているだけです。
若いころの道楽が、こんなところで、役立つとは、
思いませんでした。
何でも、やっておくものですね。

旅はいいですね。
北海道には、さぞさわやかな風が、香っていることでしょう。

2014/06/18 11:55:08

自重

パトラッシュさん

マリーさん、
あれ以来、再放送も、ダイジェストも、見ていません。
負け試合を見るのは、つらいですもの。悔しいですもの。
旅は、少し延期しようかと・・・
旅先で、頭に血が上っても、いけませんしね・・・

2014/06/18 11:49:26

ジンクス

パトラッシュさん

ばばたまさん、
見る、見ない、ジンクスは、それぞれあるようですね。
確かに、結果を知ってかの方が(特に勝った場合)
心穏やかに見られますものね。

2014/06/18 11:44:12

まとめ・・

さん

晩年ころに慕われるのは すべて人徳のなすところ。
子供見れば、親が察せられるように、
パトラッシュさんの愛弟子が礼儀正しいのも先生の力量です。

旅、ですか。
気分転換になりますね^^

2014/06/18 11:41:20

行かないで

さん

対コートジボワール戦の結果は言うなと奥様に緘口令を敷いていなかったのですか?!
いきなり結果を聞かされてはもうダイジェストを見る気も萎えたでしょうに。

横断歩道で車を停めると、帽子をとってお辞儀をする子を見るとすがすがしい気分になります。

先生、旅に出ないでください。
次もその次も見る楽しみを奪わないでください。
先生が見ると勝てるというのなら。

2014/06/18 11:06:43

反対です

さん

私は自分が見ると負けるんじゃないかと思ってまして・・・今回は旅先でもあり見ることになりました。ドキドキハラハラは一人では無理なんです。

2014/06/18 11:03:23

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