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パトラッシュが駆ける!

大阪の女(ひと) 

2014年07月25日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私はこれまで、大阪に縁がなかった。
旅の都合で、仮寝の宿を、求めたことがあるくらいで、
ほとんどが、未踏の地であった。
だから、大阪初心者ということになる。

今回の旅では、大阪城を見たいと思っていた。
寺では、四天王寺。
俗なところでは、通天閣に行きたいと思っていた。
この田舎者的発想を、多分、大阪の皆さんには、
笑われるだろうと思いつつ、私は,お上りさんなのだから、
仕方ないと、開き直ってもいた。

地方の人が、東京に来られると、皇居(江戸城)を見、
浅草観音に行き、スカイツリーに上られる。
そんなようなものだ。

東京人としては、そりゃ結構ですねと、口で言いつつ、
東京には、もっと東京らしい、優雅なところがあるのにと、
そのありきたりの発想に、苦笑せざるを得ない、
そんなようなものであろう。
だから、大阪人から、仮に笑われたとしても、それは憫笑ではなく、
苦笑だと受け止めればいい。

 * * *

少し失敗したなと思ったのは、大阪城を先にしたことだ。
観光だけなら、順序はどうでもいい。
立派な城であることは、言うまでもない。

仏教史から見た場合だ。
四天王寺の方が、はるかに古い。
大阪城の元となる、石山本願寺が、“同業“である、
四天王寺を意識することなく、建設されるわけがない。

特に夕日である。
上町台地南端からの夕日は、美しいとされている。
昔、台地の下は、じきに海であり、その海の先は、
神戸の一ノ谷までが、見渡せたという。
西方浄土への往生を願う、浄土真宗においては、その夕日こそが、
あらまほしかったはずだ。

両者の距離と、その間の地勢は、どうなっているのか。
その辺に、興味があった。
もちろん、私如きが、確かめたところで、どうなるものでもない。
ただの物好きである。

実際のところ、大阪の町は、何処もかしこもビルだらけであり、
地勢的概念など、とてもではないが、つかみ難い。

わずかに、四天王寺を後にして、西に向かった時だ。
下り坂になっていて、前方が開けている。
なるほど、振り返れば、四天王寺は高台だ。
前方は昔、一望の海であった。
仮に、ビル群を取っ払ってしまえば、そこに沈む夕日は、さぞ美しかろう。
ほんの少しだが、得心が行った。

 * * *

坂の途中に寺があり、その門前に一人のご婦人が立っていた。
「見て下さい、これを」
私を呼び止めて、指差したそこに、標語が書かれてある。
「手を合わせる心から、悪は生まれない」
お寺の門前に、よくある光景だ。
人生の指針となるべき言葉が、しばしば書かれている。

「こんな風に、生きられたらいいですね」
「そうですね」
見ず知らずの者にも、平気で話しかける、これが噂に聞く、
大阪のおばちゃんかと思った。

「どちらから?」
「東京です」
「私の母が、東京の日本橋の出でして。
実家は商売をやってました。ええ、洋傘です。
今はもう、輸入物に押され、店も閉じましたけれど」
肩を並べ、話をしながら、歩くことになった。
必ずしも、話は噛み合わないけれど、それでも、退屈はしない。

「旦那さん、いい顔をしてはる。穏やかで、教養がありそうで」
「いえいえ」
「もしかして、先生をやってませんでした?」
「いえいえ、私は元々、商人です」

ここで止めておけばよいのに、言葉を継いだのは、私に欲があるからだ。
人様から、よく思われたいという、それである。
「リタイアした後、小学校のクラブ活動に、指導者として通っていますがね」
「そうでっしゃろ。やっぱり先生や。私の目に、間違いなかった」
それから彼女は、私を先生と呼ぶようになった。

彼女、心斎橋まで、歩くのだそうだ。
何のためかは、わからない。
距離だって、かなりありそうだ。
私も、変り者では、人後に落ちないが、彼女も多分、その口だろう。
東西の、変り者同士が、たまたま上町台地の、坂の途中で、
遭遇したと思えばいい。

通天閣が見えて来た。
別れを告げようとする私に、彼女が言った。
「先生、この辺は、よからぬ誘いの多いところです。
気いつけて下さいよ」

私だって、心得ている。
それほど、世間知らずでは、ないつもりだ。
しかし、彼女の眼には、よほど頼りなく、見えたのかもしれない。

思えば三年前、難波において、一夜の宿を取った時もそうだ。
大阪まで同行してくれた、旅の道連れが、別れた後、
忘れ物でもしたように、駆けて来た。
「あっちは、宗右衛門町です。客引きが多いです。近付かない方がいいですよ」
私の顔が、よほど、ピンクに飢えているように、
見えたのかもしれない。

これで、二度目だ。
一方で「先生」と呼ばれたりもする。
このギャップがわからない。

大阪は楽しい町だ。
見残したところも、たくさんある。
もう一度、行かねばなるまい。

しかし、懸念がある。
同じ警句を、またしても言われそうだ。
私は何か、対策を考えねばいけない。

「大阪の歓楽街を、体験しに来ました」
機先を制し、こっちから、言ってしまえばいい。
「あはは」となるはずだ。
但しその笑いは、それこそ憫笑になるだろう。



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旅は道連れ

パトラッシュさん

喜美さん、
飴はもらいませんでした。
もらっても、困ります。
ビールなら、喜んで飲みますが・・・
退屈はしませんでしたね。
こんなハプニングがあるから、旅は面白いです。

2014/07/26 11:03:49

大阪の人

喜美さん

私は少しの人しかお会いしていませんし唯テレビで知るだけでした 此れは少し大げさすぎると言われたことあります 飴ちゃんもこの頃此方でも
老人は良く持っています 私お酒も駄目のくせ飴も好かないので 持ちません(私の友達は皆持っています)
京都はよく行きましたけれど
大阪は通過点で少し寄ったくらいで
余り知りません
退屈しのぎにお友達出来て楽しかったでしょう

2014/07/26 10:57:16

題名だけ

パトラッシュさん

プラチナさん、
確かに歌がありましたね。
意識して書きました。
と言っても、題名だけですけど。
内容については、忘れておりました。
今度、聞いてみたいと思います。

2014/07/26 07:52:51

大阪の女(ひと)

プラチナさん

パトラッシュさん、こんばんは。
カラオケで歌う事もある、ザ・ピーナッツの"大阪の女"しっとりとした好いおんなを感じさせる曲ですよ、一度お聴きあれ。
ブログの趣旨と関係が無さそうですね、失礼しました。

2014/07/25 22:35:16

楽しみ

パトラッシュさん

秋桜さん、
大阪の女(ひと)は、ざっくばらんで、親しみやすいですね。
大変に楽しかったです。
秋桜さんも、きっと楽しいひとでしょう。
何時か、お会いしたいものです。

2014/07/25 21:04:09

旅は

パトラッシュさん

のびたさん、
初体験の大阪は、楽しい町でした。
ど派手な看板など、大阪ならではです。
旅はいいですね。
出会いがあると、さらに楽しくなります。

2014/07/25 20:56:27

ついででなく

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
大阪メインの旅、よろしいでえ。
食べ物が美味くて、しかも安いです。
是非、いらして下さい。
お勧めコース、いろいろあります。

2014/07/25 20:53:48

あのぉ、わたしも・・・

秋桜さん



>見ず知らずの者にも、平気で話しかける、これが噂に聞く、
大阪のおばちゃんかと思った。


アハハハ!
うわさに聞くとは、そんなにユーメイですか!
わたしも大阪のおんなドス^^
人なつっこいですよ。
すぐ隣の知らないひとに話しかけたりします。


変な女のひとに捉まらないで、まずは
めでたし!です^^

2014/07/25 20:13:12

見たいものを見る

のびたさん

私もどこの街へ行ってもおのぼりさんです(笑)
好奇心旺盛に観光地を巡り 街を歩き店へ入ります
大阪の街は そんな好奇心を満たしてくれたでしょう 歴史もありそれを借景に見れば景色も変わりますね

2014/07/25 19:28:37

なんとなく

さん

師匠が先生と思われ、よからぬ場所に引きこまれまいか?と懸念してくれる大阪の優しいおばちゃん(失礼!大阪の女(ヒト))も以前の旅の同行者の方も世俗に塗れていないと思ったのでしょう?
お逢いした私には何となくその気持ちがわかるような気がします。

息子はかつて大阪はオブジェだらけの街と言いましたが、まだまだ奥が深そうで、通過点でなく大阪メインの旅も又よいかな?と思っている私です。

2014/07/25 18:28:36

函館の女(ひと)へ

パトラッシュさん

風香さん、
ここは、「ひと」で迫りました。
おばちゃんも「ひと」でありますから。
見ず知らずの女性と、おしゃべりしながら歩くのも、また楽しからずやでした。

女(ひと)と来れば、函館ですね。
あー、行きたくなって来た・・・

2014/07/25 13:13:20

難波の道すがら

さん

歩くと思いがけない出会いがあるものですね。
大阪の女(ひと)・・ひと ときましたか!

大阪のおばちゃんから アメちゃんもらいませんでした?

2014/07/25 11:50:34

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