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パトラッシュが駆ける!

あぁディズニー(前) 

2015年01月23日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

東京駅から、京葉線の電車に乗った。
車内には、若者ばかり、やけに目立つ。
始発駅だというのに、既にして空席がない。

こんな時、物欲しげに、右顧左眄をしてはいけない。
妻と二人、入口ドアの近くに立った。
視線をやや上向きに、背筋を伸ばしていなければいけない。
うっかりすると、席を譲られてしまう。
それは「あなたは老人です」と、宣告されるに等しい。

女性が立ち上がり、妻に向かい「どうぞ」と手招きをした。
それ見ろ、たちまち見抜かれてしまった。
妻の表情、あるいは挙措に、哀れを誘う、何かがあったと思われる。
ちなみに彼女は、四十代で訪れたハワイでも、
バスで、席を譲られてしまった。
譲ったのは、妻より年長と思われる、白人女性であった。

身から出た錆だ。
今日も今日とて、プライドが足らない。
緊張感が足らない。
笑ってやった。

そうしたらどうだ。
後ろから、私の肩をつつく者が居る。
振り返ると、こちらも、若い女性だ。
「どうぞ」
と言う風に、手で空席を指している。

乗車時間は、ほんの十数分、駅の数にして、六つくらいと聞いている。
私の足腰は、人一倍に強靭だ。
座る必要なんか、さらさらない。
しかし、好意を無にするのは、相手の顔をつぶすことだ。
「ありがとうございます」
丁寧に礼を言い、その空けてくれた席に座った。

譲った女性は、どうなるか・・・
連れと見える、隣席の女性の膝の上に、さながら、
幼児がふざけるように腰掛けた。
電車が動いても、二人は仲よく、重なり続けている。
女同士だから、まだいい。
これが、男女であると、少し問題だ。
男同士であると、これはかなり、怪しい光景になる。

二人、中国語らしきで話している。
「タイワン?」
聞いたら、頷いた。
私の勘も、まんざらではない。
何となく、中国本土の人ではないような、そんな気がしていた。
年長者を尊ぶ、儒教の教えは、台湾の方に、より残っているのではあるまいか。
そして、国民の多くが、親日であるとも聞いている。
大陸の人々も、今は大分豊かになったらしいが、
他人を思いやる余裕は、まだないのではあるまいか。

後で聞いたら、妻に席を譲った女性も同じであった。
と言うことは、電車の中は、台湾人の団体客で、満ちていたようだ。
舞浜駅に着くや、それらが一斉に立ち上がった。
彼らの行き先は、聞くまでもない。

降りる時に、もう一度礼を言おう。
その時は「謝々」と言ってやろう。
そう思い、構えていたのに、隣席の二人は、
私を一瞥することもなく、さっさと立ち上がり、行ってしまった。
待望の目的地を前にして、彼女らはもう、気が逸っている。
隣のおじさんなど、路傍の石のように、眼中にない。

 * * *

私達夫婦は、東京ディズニーランドにやって来ている。
入口のゲートに向かう、人波の中に居る。
幼児が少なくない。
だからここでは、電車内よりさらに、平均年齢が低くなった。
私より先輩はいないか・・・
せめて同輩でも・・・
探すのだが、一人として見当たらない。

人でごった返している。
いくら、ただの券をもらったからと言って、
易々とそれに乗ることはなかった。
後悔が、薄い雲のように、広がっている。
モルゲン氏が、それをくれると言った時に、
はっきり断ればよかったのだ。

「買えば六千四百円する」
これを聞いて、むらむらとその気になってしまった。
「ご自分で行けば、いいでしょうに」
「散々行ったよ。もう秋田県だ」
贅沢なことだが、それも道理、彼は、ここを運営する会社の、
株主なのだそうだ。

その優待券の有効期限が、目前に迫っている。
消費期限の切れそうな菓子を、恩に着せつつ、近所に配る、
そんなようなものだ。
それなのに、私はそれを断らなかった。
6400×2≒13000と、素早く暗算してしまった。
ただで女房孝行が出来る。
それで、つい、チケットを受け取ってしまった。

「あれは何だ?」
「チケットを買う列でしょ」
おびただしい人の塊りが、入場ゲートの前に蠢いている。
列なんてものではない。
サッカーのグラウンドを、埋め尽くした群衆と言った方が良い。
その群衆が、容易に前に進まない。

「パレードのせいかもしれない」
妻が言うには、最近になり、園内で行われる、
パレードのキャラクターが変わり、「アナと雪の女王」のそれになったのだそうだ。
それを見たさに、客が詰めかけたのではあるまいか。
近くにいたガードマンに聞いてみた。

「何時もこんなに、込んでるの?」
「ええ、まあ・・・」
要領を得ない。
「パレードの影響かね?」
「ええ、まあ・・・」
何と言う、歯切れの悪い男だろう。

「帰ろうか」
「せっかく来たのに」
「どうせただの券だ」
「ここまで来るのに、交通費も時間も、かかっているのよ」
それもそうだ。
こういう局面になると、女の方が、よほど冷徹な計算をする。

「シーがあるわ。あっちにしましょう」
彼女は、私の気性をよく知っている。
妥協案をひねり出した。
隣接して、もう一つの遊園地がある。

東名高速の渋滞時に、第二東名を利用する。
そんなようなものだ。
歌舞伎座が満員だから、宝塚に行く。
蕎麦屋が込んでいるから、饂飩屋にしておく。
そんなようなものだ。
私には、節操も何もない
渋滞さえ避けられるとなれば、それが少々、怪しい道でも、
突き進んで行くだろう。
                 (次号に続く)



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他人の目はともかく

パトラッシュさん

喜美さん、
ええ、頑張りますとも。
鏡はなるべく、見ないようにしています。
見なけりゃ、若いつもりで居られますから。

喜美さんも、ディズニーに行かれましたか。
開園前の無料招待とは、VIP待遇であり、すごいですね。

行列に並ぶのが嫌いな私は、もう、行くこともないでしょう。

2015/01/25 15:16:07

ワハハー

喜美さん

男性は(パトさん)何時までも
頑張るのね お他人さんが見たら
老人に決まっているのに
年金貰う人は若くはないね
今は良い世の中ですね
同じお金出して疲れているのに
席譲ってくれるのですもの感謝です

デズニーランドは皆が行けないとき
開店する前招待されて息子と行きました マスコミ関係の人旅行会社の偉い人など(私はその方の知り合い)
何でもどこでも無料で空いていて
レストランには悪い人ばかり
皆これを記事にするため 少し食べては次のお店と動き回る人で息子と驚きました 夜までゆっくりしてきました

2015/01/25 12:00:08

場違いでした

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
気は若いつもりでも、世間様の目は、誤魔化せないようです。
台湾人の親切が、コタエました。(笑)

これで最後、もう行くこともないでしょう。

それにしても、大変な人出でした。

私は、居酒屋で飲んでいる方が、性に合っています。

2015/01/23 19:32:36

ただ大好き

パトラッシュさん

澪さん、
そうですとも。
何の遠慮が要りましょうや。
貰えるものは、もらいましょう。

何事も、体験だと思い、場違いなところでも、
せっせと出かけて行きましょう。

2015/01/23 19:24:54

笑が〜

さん

パトラッシュ師匠 こんにちは。

題名を拝見した時から、「これは面白くなりそうだ」^^と、読み始めたら、電車の中から既に笑が一杯で!
師匠の気取って立つ格好から、声を掛けられた時の微妙な内面の葛藤まで浮かんで、ごめんなさい!落語より面白かったです。

そして、あのディズニーランドの広場に、師匠が奥様と立たれたお姿、その時のお顔を想像しただけで笑点観るより、ずっと笑ってしまった、いけない弟子です。
後編が待たれます。

私は子供達が小学生の頃、「一度は連れて行かねば」と根性で行きましたが、この先、行くことはありますまい。

2015/01/23 17:31:28

一緒です

澪さん

『無料・ただ・あげる・いただく・招待』

これらが大好きな私です。
見栄も恥もなくなった自分に
これでいいんだそれでいいんだって言い含めてます ( ̄▽ ̄;)

2015/01/23 16:59:46

不思議な世界

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
一度だけですか・・・
確かにあそこは、女房次第ですね。
いい歳をしたオジサンが、自ら行くところではないですから。
とにかく、不思議な世界です。
男一人、あるいは、男の複数というグループは、先ず見かけませんから。

2015/01/23 16:35:07

一度だけ

吾喰楽さん

こんにちは。

東京ディズニーランドへは、一度だけ夫婦で行ったことがあります。
息子が生まれる前です。
それで充分です。
その息子ですが、家族で何度も行っているようです。

私なら、優待券があっても、多分、行かないと思います。
でも、奥様に誘われたら、断り難いですよね。

2015/01/23 14:02:09

川柳にどうぞ

パトラッシュさん

たんぽぽさん、
夜行バスで、ですか・・・
「娘(こ)に引かれ・・・」
川柳が出来そうではないですか。
ひねってみて下さい。

USJが最近、人気らしいですね。
東京者の私が、行くことは多分ないと思われます。
しかし、誰かから、無料招待なんて申し出があると、わかりません。
そういう人間なのです、私は。

2015/01/23 13:32:43

恐れ入ります

パトラッシュさん

シシーマニアさん
ホームページの方も、お読み下さっているそうで、ありがとうございます。

ただ、いずれの文も大同小異であり、同工異曲でもあり、
あまり根を詰めてお読みになるのも、いかがなものかと・・・
歌舞伎ファンでいらっしゃるようなので、歌舞伎エッセイくらいに絞っておかれた方が、よろしいかもしれません。
私のホームページも、十三年目に入り、雑文が、それこそ、ごみ屋敷のように、堆積しております。
作者ももう、何処に何があるか、わからなくなっているほどです。

他人のブログへの反応など、お好きなようになさればいいのです。
決まりはありませんから。
私など、ごく気ままにやっております。

2015/01/23 13:27:17

まったくです

パトラッシュさん

彩々さん、
確かに、似合いませんでした。
いくら颯爽と行動しても、世間は認めてくれませんでした。
プレイバックとは、何と難しいものでしょう。

「これが最後だな」
「そうね・・・」
夫婦、頷き合ったものです。

と言いつつ、ただ券が手に入るや、また行ったりして・・・(笑)

2015/01/23 13:12:20

ふふふ(*^_^*)

さん

最高!!です

お会いしたことはございませんが、本当にああ〜ディズニーという感じが伝わってきました。

昔々娘たちと、夜行バスで行きました。
こちらは今USJの人気が高いです。

2015/01/23 13:09:16

あのねえ

パトラッシュさん

Reiさん、
私だって、現代を生きる、人間なのですからね。
いざとなれば、ディズニーにも行くし、カラオケだって歌うんです。
その「いざ」が、滅多にないだけなのです。

皆さんが、私を仙人か何かだと思っていると、いけないので、実証するために、先日カラオケにも行きました。
詳細は、SOYOさんの小噺の通りです。

Reiさんも、聞きたかったら、次は一泊覚悟で来て下さい。
たっぷりと笑わせてあげますから・・・

2015/01/23 13:06:03

ホームページ

シシーマニアさん

先日、ホームページにお邪魔しました。
まだ11月くらいまでですが、相当量の記事がありそうで、食べきれない程のおやつを目の前にして、大切にしまっておく子供の気分です。
これからゆっくり読ませて戴きます。

ブログに参加した初期、(と言っても12月ですが)色々コメントして戴いたのに、何処でお返事して良いのかわからず失礼しました。

或るとき吾喰楽さんが、その辺の皆さんの事情を教えて下さって、やっと、とにかく書けば良いらしいという事がわかりました。

2015/01/23 13:04:39

似合わない…

彩々さん

たまにはピクニック気分もよろしゅうございます。

熟年夫婦も、ここいらでたまに40年(〜45年)ほどプレイバックする必要がありそうです。

2015/01/23 12:27:53

えーっ(*_*)

Reiさん

師匠がディズニーランドですか!?
あ、シーの方ですね…

私も実は、2年ほど前におばさんたち6人でディズニーシーに行き、大いに盛り上がりました。
あそこは夢の国です!

2015/01/23 11:52:13

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