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パトラッシュが駆ける!

被害者の無念 

2015年07月04日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

古い話を持ち出すことになる。
今から、二十年以上も前である。
富山県朝日町に住む女性、Aさんは、息子さんを交通事故で亡くされた。
息子さんに過失はなかった。
Aさんは、息子が、加害者により、殺されたと思っている。

加害者は、労働組合の役員をやっていた。
裁判になると、被告の減刑を求める嘆願書が出された。
役員だから、顔が広かったのであろう。
そして、人から人へと、コネが利用されたのであろう。
多くの署名が、そこに連なっていた。

このことに、Aさんは激しい憤りを覚えた。
事件の実相も知らない人が、義理で加害者を擁護する。
それはつまり、彼らが、加害者と力を合わせ、死んだ息子を、
鞭打っているようにも思えた。

Aさんは、署名をした一人一人が、恨めしかった。
被害者の家族の辛さも、知ってもらわねばならぬ。
たまりかねて一文を綴り、朝日新聞に投稿したところ、
首尾よく掲載された。

私も実は、同じ投稿欄をよく利用していた。
憤懣やるかたないことがあると、そこへ投稿する。
するとたまに、採用されることがあった。
その一つに「死刑制度の存続に賛成する」一文があった。
加害者よりも被害者、その無念をこそ、より斟酌すべきだと書いた。

私は、Aさんに同情し、手紙を書いた。
私の掲載文をコピーして、同封した。
じきに返事が来た。
同じ考えの人がいて、うれしいです。
心強いですと、書かれてあった。

それだけの話である。
その後、裁判が、どうなったかは知らない。
私は、生存する加害者の陰には、物言えぬ被害者が居て、
その遺族が、悲しみに、打ちひしがれていることを知った。
人の命が失われた事故、事件において、義理や人情に絡んでの、
減刑嘆願など、軽々にやってはならぬと、肝に銘じた。

 * * *

元少年Aの書いた手記が、売れているという。
被害者の遺族から、中止の要請があったにも拘らず、出版は強行された。
法律的には、これを止めることが出来ない。

塞がりかけた傷を、またもや抉られるようなものだ。
遺族は、その痛みに、ひたすら耐えねばならない。
さぞ辛いであろう。
悔しいであろう。

「表現の自由」とは、本来、権力から表現者を守るために、
あるはずなのだが、この際は、弱者をいたぶるために、
その自由が使われている。

好奇心からであろう、本を買う者が居る。
ここにおいて、私は、Aさんの痛みを思い出している。
購入者らは、被害者家族の痛みと悔しさに、どれほど思いを致しているのであろうか。

発行部数の積み重ねが、そのまま遺族を苦しめる。
本を買うこと、それは、減刑嘆願と形こそ違え、実質的には、
被害者遺族の傷口に、塩をすり込むような所業であるに、
変わりがない。

富山の署名者には、浮世の義理もあったことだろう。
署名を断れぬ事情も、あったに違いない。
しかし、今回の話は違う。
手記を買った者には、何のしがらみもない。
買わなくても済んだはずだ。
それなのに、おのれの興味を満たすために買った。

惻隠の情の、何と乏しい人達であろうか。
それが十五万人も居ると聞く。
私は、暗然とせざるを得ない。

 * * *

「書かずにはいられなかった」
元少年Aは、巻末において、そう書いているらしい。
ならば、書くだけ書いて、私蔵すればよろしいではないか。
それがどうして「公開せずに居られなかった」に、
変わったのであろうか。

衝動を、彼は抑えられないらしい。
かつて、人を殺したように・・・である。
次に彼は、何を抑えられなくなるのであろうか・・・



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お金は果たして・・・

パトラッシュさん

喜美さん、
元少年の名は、今もでません。
少年法とは、何と奇妙な法律でしょう。
私には、保護が過剰と思われてならないのです。
彼は自己顕示欲が強く、謙虚なところは、まったくうかがえません。
今後は、印税の扱いが、焦点になりそうです。

2015/07/04 16:49:03

見識

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
元少年も、出版社も、許しがたいのは当然として、
今回私が憤っているのは、本の購入者です。
そこへ重点を置き、書いてみました。
本当は、朝日新聞にでも書きたいのですが、
この長さだと、とてもじゃないですが、字数オーバーです。
何処かに書かずには、居られませんで、マイブログに致しました。

運転免許のこと、よく決断されました。
「私は大丈夫」という人が多い中で、
さすがにシシーマニアさんの見識が、光っております。
ちなみに私も、七十歳になったのを機に、免許を返上致しました。
少しさびしかったですが、今はさばさばしております。

2015/07/04 16:44:27

彼なら

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
想像に難くないですね、ゴーストライターの存在は。
自己顕示欲の強い人間の、やりそうなことです。

山形旅行、楽しんできて下さい。

2015/07/04 16:35:43

大間違い出版社

パトラッシュさん

arataさん、
ご同感頂きまして、ありがとうございます。
出版社の罪は、大きいと思います。
さまざまな理屈を付けつつ、金儲けが目的であることは、明々白々ですから。

2015/07/04 16:31:54

悪いは一生つくはずだ

喜美さん

不思議な事に加害者の名前でないですね成人でないとか 此の間の川崎の事件も今18歳は大人です更生してから
困る?名前が出ても悪いことしたから仕方ない 其れにもめげずに頑張って正しい生活するべきです
今回もお金は犠牲者のお宅にとか言っているらしいですけれど英雄気取りにならなければいいですね

2015/07/04 15:11:54

文章の持つ力は、いずれの方向に向かっても強いですね

シシーマニアさん

冷静に代弁してくださって、ありがとうございました。
私のように、「思い余って言葉足らず」の気持ちで、中々発言できなかった人は、きっと他にもたくさんいらっしゃる事と思います。
話題にすればする程、著者と出版社のプラスになると思うだけに、ますます口を閉ざしてしまう情けなさを、感じていました。
かつて朝日新聞に、交通事故で家族を失った方達の記事が、長く連載されていた事があります。そして最後に、記者もその一人だった事が付け加えてありました。
私は毎日、涙とともに読みながら、これは自分への警告だと思って、その頃思案していたペーパードライバーからの復活を、諦めたことがあります。
被害者の気持ちには、中々思い至らない自分を、深く反省しました。

2015/07/04 11:25:16

同感

吾喰楽さん

こんにちは。

福島からです。

100%同感です。
真偽は分かりませんが、ゴーストライターがいるとの噂もあります。
とんでもないことです。か

2015/07/04 11:25:04

同感です。

さん

私も憤りを感じました。
出版社も許せないです。

2015/07/04 10:17:16

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