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パトラッシュが駆ける!

三年の縁 

2015年09月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

九月には、八ヶ岳の山麓に行き、坐間先輩の山荘に泊まらせてもらう。
これが三年続いた。

山荘は、鬱蒼と広がる、カラマツの林の中にある。
時に周辺を観光し、蕎麦を食い、温泉に漬かったりするけれど、
滞在中の多くは、山荘のリビングルームに座し、林を眺めている。
眺めながら、先輩と話をする。
時に音楽を聞く。
朝から晩までである。
何しろテレビがない。
インターネットにつながろうにも、パソコンからしてない。

よく話題が尽きない。
共通する関心事には、文学があり、出版のことがあり、
旅のこともある。
そこから枝分かれし、葉っぱの先の、葉脈のようなところにまで、話が及ぶ。
それが三年続いた。

今年も、誘いがかかるかと思っていた。
先輩は、兵庫県宝塚市に住んでいる。
そこから車で、本州を縦貫するように、八ヶ岳山麓までやって来る。
その出発前に、電話がかかる。
「来ないか?」
三日ほど後の、日を指定する。
先輩が山荘に着き、掃除などを済ませ、落ち着いた頃と思われる。

「行きます」
私は答える。
八ヶ岳は、若い頃から好きな山だ。
遠望しているだけでも、飽きない。

山荘を持つことは、私の長い間の夢であった。
しかし、甲斐性なしの私には、その力もなく、
とうとう夢のままに終わっている。
他人の山荘ながら、そこで過ごす日の、楽しからぬはずがない。
その招かれた日には、早朝新宿発の、特急あずさに乗り、
いそいそと出かけて行く。

それが三年続いた。
いずれも、九月の初めである。
そろそろ電話のかかる頃だ。
八月の末から、少し身構えるような気分になっていた。

しかし、かかって来ない。
何故か。
わからない。
先輩、体調でも崩したか・・・
これが先ず、考えられる。

しかし、今春宝塚市で会った際は、元気であった。
駅前のホテルで、飲食を共にした。
免許証も無事に更新が出来、今年も山荘へ行けると、
張り切っていた。

三年は、微妙な時間だ。
一つの節目として、しばしば用いられる。
曰く「石の上にも」とか「嫁して三年」とかである。
「三年目の浮気」なんてこともある。

とうとう愛想を尽かされたか・・・と、こう思わないでもない。
三年はむしろ、よくもった。
私と言う人間の、底が見透かされるには、
十分な時間だったと、言えなくもない。

こちらから電話をしてみようか・・・
しかし、それは催促というものだ。
私にだって、プライドというものがある。
いくらなんでも、そこまで図々しくはなれない。

 * * *

昨年のことであった。
何時ものように、酒を飲みながら、雑談に興じていた。
突然先輩が言い出した。

「アベノミクスをどう思う?」
「私はどうも、今後が心配なんですがね。かなりのインフレが、
反作用として起きると」
「しかし、何もやらないよりはいい。これまで歴代政府は、
皆、手を拱いていた。
少なくとも安倍さんは、本気でデフレ退治をやろうとしている。
これを評価してやらねば」
「私、安倍さんは嫌いです」
「好き嫌いで言っちゃー、どもならんな」

安倍首相の、その右寄りの政治姿勢が、私とは、
合わないのだと、こう言いたかった。
しかし、それを言えば、さらなる議論へとエスカレートする。
そもそも経済とは、絶えず右肩上がりで、成長を続けねばいけないのか。
私は、デフレのままでも、それはそれで、構わないのではないかと思っていた。
しかし、それを言えば、さらに論争となる。
それで、好き嫌いの問題に帰結させ、終りにしようと思った。

「私は実は、原発にも賛成なんだ」
先輩が、さらに言い出した。
「そうですか」
「この国が、成長を維持して行くためには、必要だと思っている」

彼は、私が原発反対のデモに行っていることを知っている。
知った上で、自分の意見を言っている。
これは、仕方のないことだ。
誰にでも、考えというものがある。

たまたまそれが違ったところで、人間関係に亀裂を生じさせることもない。
私は、両論並立で、よいと思っていた。
あいつとは、政治に対する考えが違う。
だから付き合いは止めてしまおう。
などと考えたら、世間と言うものは、極めて狭くなる。

しかし、議論となるを恐れ、自分の考えを、
飲みこんでしまうのもいかがなものか。
論破を目指すわけではない。
論難するわけでもない。
言うだけだ。
腹に溜めて置くのは、よろしくない。
思っていることは、言うべきであった。
と、今になって悔やんでいる。

今の日本人の生活は、恵まれ過ぎている。
昔の日本人に比べたら、王侯貴族のような生活をしている。
これが少々、レベルダウンしたところで、それは耐えるべきではないか。
経済成長を至上とする考えは、何処かに無理が来る。
何処かで破綻する。
それなら、予めダウンサイジングして、備えておく方がいい。
アベノミクスのような、不自然な成長戦略には無理が伴う。
原発は、仮に今の世の中には役立っても、将来に禍根を残す。
子孫に禍を及ぼすようなものを、残してはいけない。

今年山荘に行ったら、これらのことを、言ってやろう。
異論をぶつけ合って、それで壊れる仲なら、それまでと思うべきだ。
こう思っていた。

そうしたら、誘いが来ない。
既にして、九月も下旬に入っている。
恒例が、途絶えつつある。



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さあ、どうしましょう

パトラッシュさん

我太郎さん、
ネッ友は、淡い付き合いではありますが、確かに電源を切れば、それで終わりというところもあり、
案外気楽と言えなくもないですね。
現実に、三年も付き合っていると、切るにしても、
切られるにしても、すんなりとは行かないようで・・・
困っている次第です。
しかし、般若心経にあるように、一切が空なのだと、割り切れば、これも大げさに考えることは、ないのかな・・・と、思ったりもしています。
しばらく様子を見て、手紙でも出そうかと思っております。

2015/09/28 20:54:09

さてどうします

我太郎さん

ネット友なら電源切ればの世界ですが、お付き合いの様子からではそうもいかないでしょう
ひょっとして病気と言うこともあり、ご機嫌伺いの便りも良いのではないでしょうか
それでことの次第ははっきりするでしょう
病気だっらた大変ですよ

2015/09/28 19:42:09

安倍嫌いで

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
こんにちは。
ホームページまでお読み頂きまして、誠にありがとうございます。

歩いて遍路旅をやるくらいの者は、おおむね自由人です。
よく言えば「不羈の人」悪く言えば「勝手人間」です。

先輩には、さまざまな面で、一目置きつつも、
個性の強い者同士、互いに譲れないところもあったようです。
肝胆相照らす仲までは、熟していなかったようで・・・
残念ですが、このまま音信不通になったとしても、
諦めざるを得ないようです。

私は若い頃も、政治に無関心ではなかったですが、デモに行くようなことはありませんでした。
人生も先が見え、にわかに「行動派」となっております。
商売を辞め、周囲に気兼ねすることもなくなったせいでしょう。
思ったことを、自分なりに表現したいと、こう思うようになりました。
テレビに安倍さんが映ると、すぐにスイッチを切り、妻に呆れられております。

2015/09/27 16:58:14

師匠の政治姿勢に、賛同します。

シシーマニアさん

ホームページの「山荘好日」も拝読しました。
今年はお誘いがなかった、その件に対する説明もないという先輩のお人柄に、ちょっと感動しました。
此方から電話をしない、という師匠ともよい勝負ですよね。

「山荘好日」に登場するFさんとの交友にも、共通したところが窺えました。

四国遍路の旅先で出会われた方だそうですね。
一人旅を好まれる方には、しがらみを排する傾向があるのでしょうか・・?

2015/09/27 10:54:29

Oh Takaraduka

パトラッシュさん

彩々さん、
そうですね、ほとぼりの冷めた頃
(と言っても、別に争ったわけではないのですが)
何気なく、手紙を出してみましょうか・・・

それともう一つ、方法が・・・
宝塚ファンになったを装い、また大劇場まで行こうかしら・・・
すみれの花の咲く頃にでも。(笑)

2015/09/26 16:45:29

いいですね、本当の友人は

パトラッシュさん

Limさん、
激論しても、両論並立で終わる。
それが本当の友人関係というものですね。
私達の場合、ひょんなことから知り合って、会った回数も少なく、成熟した友人関係とは、とても言えないようです。
今後さらに深められるだろうかと、期待していた矢先のことです。
残念ですが、様子を見るより、仕方ないようです。

2015/09/26 16:37:44

心淋しいですね

彩々さん

楽しみにされていたお誘いが掛からない
と言う不安。
お互い確実に一年歳を経て、体調の変化、お身内の事などなど心配したらきりが
ありません。
このままご連絡が無いと、さらに心配が
募ることでしょう。

山荘に行かれることはあきらめると
しても、お手紙をされてはいかがですか?

2015/09/26 16:24:50

信条の違い

さん

先日友人と酒を飲みました。
彼は安保法案賛成派。私は反対派。
ビールの泡を飛ばしながらの激論でしたが、
結局結論は出ませんでした。

結論が出ないので、「次に行こうか。」ということで、他の店でまた飲みましたが、次の店では、そんな話は一切出ず、馬鹿話で終始。

お互いの違う信条を知りながらも楽しく飲めるいい友人です。

2015/09/26 16:04:00

安倍首相

パトラッシュさん

秋桜さん、
拙文をお読み頂きまして、ありがとうございます。
先輩から、連絡のない、理由がわかりません。
仮に体調不良であったとして、それを喜ぶわけにも行きませんし、困った状況ではあります。

安倍さんの強引なやり方には、ほとほと愛想が尽きております。(最初から、愛想なんかなかったとも)(笑)
戦後最悪の首相との思いが、強くなっております。

2015/09/26 15:56:10

会者定離

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
昨夕帰宅しました。
旅の模様は、また改めて綴るつもりでおります。

先輩からの誘いを、待っておりました。
それがないので、旅に出る気になりました。
九月も、もうじき終わり、誘いのないままに、過ぎそうです。

先輩の、体調不良がまず考えられます。
私より、高齢ですから。
しかし、わかりません。
時が経てば、いずれはっきりするでしょう。
こちらからは、切りたくない縁でしたが、切れてしまうのも、仕方ないですね。
この世はすべて、会者定離ですから。

このまま淡々と、様子を見ることにします。

2015/09/26 15:51:15

考えてしまいますね。

秋桜さん

3年続いていたお誘いがぷつりと途絶えた。
soyoさんが言われるようにいろんな理由が考えられますが
結局は他人の心中は推し量れないですね。

安倍さんの強硬政治手腕・・・
祖父の岸さんを真似ているとか。
本人は英雄気取りのように感じられ不快です。

今の世の中、なにかにつけ
脆弱過ぎて依存過多ですね。

2015/09/26 15:11:34

わけは不明でしょう

さん

パトラッシュ師匠 こんにちは。
そして、お帰りなさい。

今年の八ヶ岳行き、何故なかったのか?
色々考えられますね。
大きな病でなくとも、この、暑かったり急に肌寒かったりの気候です。
体調を崩されてもおかしくありません。

お歳を召されて、山荘行きが億劫になられた。

何かの事情で、山荘を手放された。

政治の話は、難しいから、それで決裂もままありますが、さほど紛糾しなかったので、少し考え難いと、私は思います。

思えば、我が家での祭りの時の人寄せも、私がダンスを始めて忙しくなって、いつしか、立ち消えとなりました。

毎年、畑に収穫体験に招いていた友は、また今年もと思っていたでしょうが、畑そのものがなくなってしまいました。

人との繋がりも、ふいに途絶えたり、復活したり、新たな出会いがあったりです。
先のことって、わからないものですね。

2015/09/26 12:21:37

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