メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

パトラッシュが駆ける!

続・最後の寿司は 

2015年10月10日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

先日、寿司のことを書いたら、数人の方から、コメントを頂戴した。
「私も実は、シャリを小さくしてもらいます」
こうおっしゃる方が、何人かいらした。

U子さんもその一人だ。
「ねえねえ、その店は、何処なの?」
私の紹介した、“シャリ小”の店に、興味をもったらしい。
こういう時、私は少し鼻が高い。
名店探索の、努力はしないくせに、他人には、いいところを見せたい。
そこで、他から得た情報を、右から左へと横流しする。
それだけのことなのだが。

「以前は、磯助に行ってたんだけど」
U子さんは、我が街でも著名な、高級寿司店の名を挙げた。
握りの一人前が、七〜八千円と聞いている。
店頭には、暖簾がぽつんと下がっているだけで、メニューも値段も出ていない。
そう言う店へ、私は恐ろしくて、入ったことがない。

「あら、たいしたことはないわよ」
U子さん、平然とおっしゃる。
但し、旦那が店内で、トラブルを起こしたとかで、
その店磯助とは、疎遠になったらしい。
それで次なる寿司屋を求めているようだ。

「磯助とは、比べものにならないと思いますが」
店の名と場所を教えてやった。
「ネタはいいですよ」
「うんうん」
「値段も手ごろです」
「うんうん」
「回転寿司ではありません」
私は、言わでもがなのことばかり、言っている。
そもそも磯助の寿司を食べつけた人が、値段に頓着するなど、あり得ないではないか。

「私、回転寿司って、行ったことがないの」
U子さん、意外なことを言い出した。
今や外食産業における、一方の雄であり、
日本人の食生活においても、大きな部分を占めている。
その回転寿司を、知らないとおっしゃる。

但し、わからないでもない。
人間は欲深い生き物であって、一旦美味を知ってしまえば、
次はさらなる美味を求める。
一方で、より劣るものを、受け入れがたくなる。
知った不幸というやつだ。
これ、味覚に関してばかりではない。
見る、聞く、すべてにおいて同じだ。

書画骨董などに入れ揚げたら、その注ぎ込む金は、膨大なものになる。
芝居だってそうだ。
コンサートだって同じ。
追いかけだしたら、もう、きりのないことになる。
むしろ、寿司でよかったと言えなくもない。

 * * *

回転寿司未体験者というのを、私はこれまで、二人知っていた。
一人は、テレビのコメンテーターH氏。
「ぼく、回転寿司って、行ったことがないんだ」
番組の中で、たまたま寿司が話題になった時に、ぽつりと漏らした。
そこに「あんなもの」という響きがあった。
「寿司じゃない」とは言わないまでも、
いかにも見下した感があり、見ていた私は、いい気持がしなかった。

そりゃ、あなたは著名人、財布も豊かであり、さぞおいしい寿司を食べつけているだろう。
しかし、テレビで世相を斬る人が、
庶民の食べ物に通じていないというのは、いかがなものか。
さながら、ユニクロの衣類を知らず、満員の通勤電車にも乗らず、
吉野家の牛丼を食わず、マックのハンバーガーも食わず、
それでいて、もっともらしく、世相を語るようなものだ。
テレビに出るなら、もっと世間を、お知りなさいなと言いたくなる。

もう一人は、友人の山靴。
食について、こだわりのある人だ。
その頭の中にもまた「あんなもの」という思いは、あるに違いない。
しかし、彼の場合は、一市井人だ。
しかも年金生活者だ。
その収入の範囲内でやることに、他人がとやかく言うことはない。

さて、ここに、三人目が登場した。
U子さん。
彼女もまた、山靴と同じく、一人の自由人だ。
だから、回転寿司なんか、その思いを曲げてまで、体験する必要もない。

回転寿司が生まれて半世紀、隆盛期を迎えて三十年も経っている。
この間、彼女は、これほど世にあふれる、
今や国民食とも言える回転寿司を、食べなかった。
歌舞伎や文楽に、造詣の深い人だ。
その感性には、並々ならぬものがあると思われる。
きっと、何か思うところがあると思われる。

さて問題は、私の教えた店、Mだ。
ここへ行ったU子さんが、その結果を、何と言うかだ。
「美味しかったわ」
こう言う可能性が、二割方ある。

「私の口には合わなかったわ」
これも二割方ある。
これは「不味かった」と同義語だ。
残りの六割が「今いちね」と思われる。
これは「都合により食べてもいい。しかし積極的には食べません」
と言っているようなものだ。

数字通り、この線になる可能性が高いと私は見ている。
その結果を見て、私はまた誰かに、Mを推奨するだろう。
いや逆に、もうこれきり、Mを語らないこともある。
自分の味覚に、自信を持てない私は、このようにして、
他人の意見を窺がいつつ生きている。



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

通は・・・

パトラッシュさん

喜美さん、
そうなんですよ、最近の回転すしには、寿司以外のものが、数多く回っています。
茶碗蒸しやうな丼などは、まだいい方で、うどんやカレーを出すところさえ、あるそうです。

そして、そうです。
通は、注文するのです。
その方が、握りたての、新鮮な寿司が食べられるのだそうです。

2015/10/10 16:11:21

手巻きも結構で

パトラッシュさん

ばばたまさん、
そうですか、そちらもですか・・・
こちらでも、寿司屋は閉店が相次ぎ、昔ながらの町の寿司屋は、ほとんどが消滅してしまいました。
今あるのは、回転寿司か高級寿司店かで、極端に二分化されてしまっています。
手巻き寿司、あれはあれで、楽しいですよね。

2015/10/10 16:07:46

回転寿司

喜美さん

始めて行ったのが孫達とでした
お茶の入れ方やら色々教えてもらいましたけれど 孫が喜んで食べたものは
メロンでした何故。
其れから子供たちに聞き 回転して来るのは食べずに注文するとすぐ来て新しいとか 色色覚えたら今は回転ずしでも回転せず注文すると出来たのが回って自分の前にとまるそうです 驚きばかりです

2015/10/10 15:47:07

近所のすし屋

さん

3か月の間に歩いて行けるお寿司屋さんが2軒も廃業されたので、今はもっぱら家で、手巻き寿司ばかりです。

2か月に1度しか行けなかったのが
手巻き寿司にすると1カ月に2回は楽しめます(笑)。
すっかり節約的な生活が身に付きました。

2015/10/10 14:00:48

許す

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
貴女のことだから、格別に許しましょう。(笑)

M・・・
多分、ご推察の通りかと思います。
チェーン店であり、そちらにも、支店があるかと思われます。

2015/10/10 11:43:20

満足

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
そう、招待なら、話は別ですよね。
ところが、そんなオイシイ招待は、私のところへはやって来ません。
(権限も何もない、ただのおっさんですから)

自費で食べるとなると、自ずから上限があります。
幸いなことに、何を食べても美味いですから、わびしいと思うこともありません。

そうそう、昨日、弁当を食べました。
吾喰楽さんが、前に紹介された「まい泉」のとんかつ弁当です。
デパ地下で見かけ、ひれにしました。
これが美味かった。
今度は、店に行って、揚げたてを食べてみたくなりました。

2015/10/10 11:40:01

多分知っているM

さん

パトラッシュ師匠 こんにちは。

師匠が、眉を上げて「邪道」と仰るかもしれませんが、私はそのMでも「しゃり小でお願いします」と、刺身に毛が生えたような寿司を食べています。
さすがに、いささか食べにくい。(笑)
でも、好きなネタを数多く食べたいので、仕方ないのです。

本格的な寿司を食べ慣れた方には物足りないかもしれません?
私とて、バブルの頃に、父が連れて行ってくれた新橋の鮨屋と比べると、やはり違います。
でも、年金暮らしの身、身の丈に合った贅沢をするには充分だと思っています。
さて、U子さんの評価は如何に?

余談ですが、何んとも読んでいて心地よい文章です。
私は只今、悪戦苦闘しながら新作執筆。
まだ五千字くらいの冒頭部分です。

2015/10/10 10:27:15

金銭感覚

吾喰楽さん

おはようございます。

私でしたら、握りの一人前に七〜八千円も出すなら、割烹のコース料理を選びます。
勿論、その値段では食べられない店も、少なくありません。
そういう店には、行きません。
ご招待なら、話は別ですが。

昼食でしたら、原則、千円以下です。

いつもご馳走を食べている方は、意外と満足感を味わっていないような気がします。

2015/10/10 10:24:01

PR





上部へ