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パトラッシュが駆ける!

傘 

2015年10月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

旅の途中で、傘を買う羽目になった。
ホテルの隣に、セブンイレブンがあったので、そこに駆け込み、買った。
さすがにコンビニであって、雨が降り出すや、
すかさず店頭の目立つところに、配置すると見える。
ビニール製であり、値段も、税込みで五百円ぽっきり。
実によく、購買者の心理を読んでいる。

「あいにくですねえ」
おばちゃん店員が、タグを外しながら、嬉しそうだ。
忌々しいったらない。
こんなもの、金を出して買うものでは、ないと思っていた。
しかし、背に腹はかえられない。
私はこれから、大原美術館まで歩かねばならない。

そもそも、天気予報がおかしいのだ。
昨日、東京を出るまでは、ここ数日の広島・岡山地方に雨マークなんかなかった。
その通り、日中はよかった。
晴れて、暑いくらいであった。
夜、ホテルで寝ていたら、妙な音がする。
もしやと、耳を澄まし、どうやら雨らしいと気付いた。

仕方ない。
傘を差して、倉敷の町を歩いた。
そして、午後から鞆の浦に向かった。
電車で40分、そこからバスで30分、広島県東部の、海辺の町である。
着いたらもう、そこでは雨が上がっている。
こうなると、傘が邪魔だ。
文字通りの「長物」であり、青空の下で、これを携え歩くほど、
間の抜けた光景はない。

しかし、私には、捨ててしまうことが出来ない。
まだ、五百円の記憶が生々しい。
買って数時間後に、傘を捨てるのは、即ち硬貨を捨てるに、
等しいのではないか。

山の中腹にある、古寺から降り、古い港町を散策していた時だ。
俄かに雨が降り始めた。
これを驟雨と言うのだろう、先ほどまでの晴天が、ウソのようだ。
傘を捨てないで、よかった・・・
人生、何が幸いするかわからない。
慌てて逃げる、観光客を尻目に、私は悠然たるものだ。

白壁の土蔵や、格子戸の町屋が、雨に煙っている。
石畳の小路が濡れ、その黒を一層、艶やかにしている。
画家は、構図に困ると、画面に雨を降らせるという。
雨中の港町は、そのまま絵になっている。

その日は、鞆の浦に泊まり、翌日帰宅した。
雨は止んだが、傘は持ち帰った。
新幹線の中へも持ち込んだ。
何やら知れぬが、この傘とは縁があるようで、手放し難くなっている。

 * * *

妻は私に対し、まるで子供に、言い聞かすみたいに言う。
実際、子供と思っているのかもしれない。
衣食住の、すべてにおいて、私が彼女に、依存しているのだから。

「だから言ったでしょ、折り畳み傘を持って行きなさいって」
「予報が外れた。悪いのは気象庁だ」
「予報に関係なく、持って行けばいいんです。軽いんだから」
「これは、サロンの置き傘にして、皆さんに貸し出すさ」

「留守中に一本、戻ってますよ。Hさんが、返しに来ました」
「あいつめ、貸したのは、夏の盛りだぜ」
「今日は、降りそうだからって、持って出たそうです。
それが降らないので、こちらへ返しに寄ったみたい」
「あの野郎・・・」

借りたら、すぐに返す。
これが気持いい。
しかし、傘の場合、返さないやつがいる。
これが困る。
一方で、忘れた頃に、返却に及ぶ者がいる。
これが、もっと困る。

半年前にもあった。
貸したのは、女子高生であった。
これもビニール傘である。
彼女、数日後には、オーストラリア留学に、出発すると言っていた。
これはもう、返って来ないだろうと決め付けていた。

貸出が多くなると、囲碁サロンの傘立てが、寂しくなる。
不意の雨に際し、客に貸し出す傘がない。
これが困る。
そう思って、電車の中に置き去りにされた、ビニール傘を拾って来たりする。
適正在庫は3〜4本。
このくらいがいい。
これだけあれば、突然の雨にも対応出来る。

ところが、このところ、返却が相次いでいる。
女子高生の場合、半年も経って、代理のおばさんが、
返しに来た。
そこへ私が、新規の傘を持ち帰った。
ただ今、適正在庫をはるかに超え、八本のビニール傘がある。
傘立てに、立錐の余地が、なくなりつつある。

 * * *

肥満、そして喫煙は、自己制御が難しいとされている。
理性では、どうにもならない。
“つい”その情況に陥ってしまう。

他に“つい”の例として、ビニール傘があるそうだ。
これを溜めてしまう人が、少なくない。
用心が足らない。
計画性がない。
場当たり主義。
それらを総合し、だらしないという。
その表れとして、傘が溜まって行くと言う。

今、私のサロンの傘立てが、そうなっている。
これ以上、ビニール傘を増やしてはならない。
電車内で、置き去りの傘を見ても、もう、持ち帰ってはならない。
妻の言い分に、従うのはしゃくだが、
旅には、傘を持って出なければいけない。



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困ったもんです

パトラッシュさん

我太郎さん、
そうなんです。
代償を得たと、割り切れば良いのです。
風邪をひいて、医者に行くことを考えたら、五百円だろうが、千円だろうが、安いもんだと。

貧乏育ちは、いけません。
つい、もっと得をしようと、捨てきれないのです。

2015/10/17 13:23:33

パラサイト亭主です

パトラッシュさん

彩々さん、
私の妻に会われても、がっかりされるだけでしょう。
私とは、似ても似つかぬ、面白味のない人ですから。
ただ、彼女のおかげで、私は好き放題をさせてもらっています。
それだけで、しがみ付いているようなものです。
(熟年離婚されると、私は生きて行けませんので)

2015/10/17 13:18:57

もったいない

我太郎さん

国際語になっているようですね
100円の傘でも捨てません
歳をとってその内ゴミ小屋になるでしょうが、嫁さんがいれば大丈夫です

>即ち硬貨を捨てるに、 等しいのではないか。

同感なんですが、ものは考えよう
お陰で風邪を引かずに済んだ、医者代が助かるし、何より旅行にケチがつかなかったと思えば捨てても価値有り
私なら多分トイレで忘れ(た振り)るでしょう

2015/10/17 07:40:07

ク、ク、クッ

彩々さん

モノに、人に、出来事に対してパトさんの
独特な目線で捉えた文章に、いつも笑いを噛み殺しながら
拝読させていただいてます。

おはようございます。

傘に対しても、前回のお寿司に対しても、まるでそれらが
人格を持っているように表され、近くでその様子を見させて
いただいている気分です。
なので、まだ見ぬ奥様に対しても、お会いする機会が
あったら、旧知の仲のようにお話が出来そうです。

おそらく、その日の気分で動かれるパトさんに対し、
奥の方は大局を見ておられるのですよ。
ふーてんの寅さんのように、足の向くまま、気の向くまま
家を留守に出来るのは、どんと奥の院(?)におられる
その方がおられるからなのですね!?(笑)

2015/10/17 07:13:59

頭が上がりません

パトラッシュさん

うきふねさん、
そうです。何でも適量というものがあります。
傘は特に、多ければよいというもではないようです。
まあ、10本なら、許容範囲でしょうか。

妻には、毎度やり込められています。
年と共に、それが甚だしくなるようで、困っております。
生殺与奪の権を、テキに握られているのですから、どうにも仕方ありません。

2015/10/16 19:18:00

こんばんは

うきふねさん

傘にも適正在庫があったとは・・・
なめていたのか、うっかりしていました。
うちは日傘も込みで10本はあります。
折り畳み傘は3本。多すぎますね。
一事が万事ということでしょうか。
さっぱりさせなければ(^.^)
奥さまとのくだりは、いつもながら楽しく
読ませて頂きました(笑)

2015/10/16 18:01:46

日替わり傘で

パトラッシュさん

みさきさん、
傘コレクターでいらしたのですね。
武骨者の私は、傘なんて、なんでもいいじゃん・・・とこう思っていますが、
しかし、粋な傘を差した、女性の後ろ姿を見るのは好きです。
いや、もちろん、前姿もですが。

五本もおありになる・・・
雨の五日も続くといいですね。
毎日取り換えたりして・・・

2015/10/16 16:45:55

この国では・・・

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
鞆の浦では、とうとうこれはという女性に会えませんでした。
港町で、和服に、蛇の目の傘でも差した女性に会えれば、いう事はなかったのですが・・・

英国紳士は、そうですか。
傘は持つけど、差さない。
そこに男伊達が、光るということでしょうかね。
見習いたいけれど、この湿潤な日本では、下手をすれば、風邪をひきます。
ビニール傘は、需要が生み出した、この国ならではの、便法なのでありましょう。

2015/10/16 16:40:03

価格差

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
百円ショップの傘は、長持ちしないと聞きましたが、延べ十本としても、ずいぶんと重宝しましたね。
私のは、五百円。それで捨てられなかったようなもの。
百円だったら、多分捨てていたでしょう。(笑)

2015/10/16 16:30:31

男は・・・

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
今時、ビニール傘が一本とは、優秀です。
一世帯平均、10本近の貯蔵があると、何かのデータで見たことがあります。
そう、気兼ねなくあげられるのが、ビニール傘のよいところですね。

旦那さんと息子さんを、責めないで下さい。
男は、手ぶらで行動するのが好きなもので、傘みたいな、持ちつけないものには、神経が回らないのです。

2015/10/16 16:21:35

珍説

パトラッシュさん

ばばたまさん、
傘持ちでいらっしゃるのですね。
お母様、傘寿の記念に、傘を大量に贈られたのかしら・・・(笑)
そうです。
男は手ぶらが好きです。
余計なものを持つと、いざと言う時に、獲物(女性)を追いかけられないからだと言う説があります。
ウソです。
私の勝手な想像です。

2015/10/16 16:16:14

ちょっと、傘マニア。

みさきさん

まだ独身だった頃、折り畳み傘を買うのが好きでした。明るい、綺麗な色のを見ると欲しくなりました。一番気に入っていたのは、雨の日にはもったいなくて使えませんでした。(^^ゞ
傘たちも年をとり、開くときは骨がこわばってちょっと大変ですが、健在です。5本、あります。(^-^;
ちょっと地味なのが、もう一本欲しいかも。いえ、今度買うなら、色の制約のない透明傘にします。(^^♪

2015/10/16 15:53:21

風土の違い、ってよいものですね

シシーマニアさん

映画などで見るヨーロッパの人たちは、余り傘を差しませんね。国にもよると思いますが・・。
英国紳士の傘も、綺麗に折りたたんであるので、少しくらいの雨では惜しくて拡げない、と聞いた事があります。
コートの襟を立てて、傘も差さずに歩くパリジャンなんて、絵になりますものね。
これは風土の違いで、雨の降り方にもよるでしょうね。

師匠が以前、ギャラリーに投稿していらした鞘の浦の街並みの風景に似合うのは、やはり傘をさしたお姐さんでしょうか。

2015/10/16 13:59:41

私の場合

吾喰楽さん

魚津に居たとき、百円ショップで、長尺の傘を十本、まとめ買いしました。
最近、最後の一本が壊れました。
壊れたり、貸したまま戻らなかったりです。
随分、長持ちしました。

今、外出用に使っているのは、妻が使っていたものです。
紺色の無地ですから、男でも大丈夫。
これは、大事にしています。
天気がいい日の遠出は、折りたたみ傘をバックに入れます。
これは、安物ですが軽くて小さいから、重宝ですよ。

2015/10/16 13:21:41

折り畳み傘

さん

私は、折り畳み傘が嫌いです。
旅に出る時、雨の予報が入っていたら、やむなく入れますが、さして中途半端、畳むと実に持ち歩き難い。
自分の勘を頼りに、長い傘を持つか、ビニール傘を買うかです。
でも、幸い、我が家のビニール傘は1本。
これは、誰かに貸す(返らないことが前提で)のに丁度よい。

昔は、夫と息子に、まともな傘を全部、何処かに忘れて来られて怒りました。(笑)
あの当時、ビニール傘があれば!

2015/10/16 13:12:28

ここ20年傘は買ってないかも

さん

母と同居して19年新たに傘は買ってないようです。
だって折り畳み傘が10本近くありますので
何処にでも入るくらいの傘は便利です。
最近はリュックが多いので苦になりません。その分夫がビニール傘を持ち帰りますね。
男性は手ぶらがお好きなようです。

2015/10/16 12:45:15

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