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パトラッシュが駆ける!

へえ、そうなんだ 

2015年10月31日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私の囲碁サロンは、初心者教育に力を入れている。
何をえらそうに・・・と言われそうだが、
実は、そうならざるを得ない事情もある。
ベテラン客が少ない。
こんな小さなサロンに来なくても、彼らには、他にいくらでも、
碁を打つ場所があるからだ。

一方、初心者は、ややもすると碁会所の敷居が高い。
行き場のない彼らを、私のサロンが、受け入れる形になる。
落ち穂拾いのようなものだ。
それなら、最初から、落ち穂にターゲットを絞ってしまおう。
特化してしまおう。
「初心者・級位者のためのサロンです」
入口のガラス戸に、こう掲げている。

生徒は、幼稚園児から、古希を過ぎたご婦人まで、10人ほど。
二年前まで、八十過ぎの男性が来ていたけれど、それが都合で、
来られなくなり、そのご婦人、R子さんが最年長となった。
長老とは呼ぶまい。
自転車で飛び回り、水泳はやる、テニスはやる、元気印の女性なのだから。

彼女に、囲碁の基礎から教え、一年半になる。
出来るだけ、他流試合をやりなさいと勧めている。
囲碁は学問ではなく、技術だ。

技術は、それを教えられただけではだめで、実際に試して、体得しなければならない。
「勉強と実戦は、車の両輪です。両者が相まって、強くなるのです」
ことあるごとに、こう言っている。

R子さんは頷いて、区立のコミュニティセンターへと行き出した。
そこでは、定期的に、囲碁の集まりが持たれている。
そこに加わらせてもらい、切磋琢磨することになった。
「いいことです。負けてもいいから、実戦を多く積みなさい」
ことあるごとに、私は、その尻を叩いていた。

「どうでしたか、あちらでは」
私は、R子さんに対し、サークル内での戦績を、必ず尋ねていた。
どんな戦いになり、どんなふうに勝ち、あるいは負けたか。
それを知れば、今後に生かすことが出来る。
特に大事なのが、敗因だ。
「そこはじっと、伸びておくのです。そうれば、
ほら、一手勝ちでしょ」
盤上に、問題の場面を再現し、つぶさに正解を教えてあげられる。

しかしR子さん、このところ、戦績について、語らない。
「ちょっと都合があり、先週は休みました」
こんなことばかり言っている。
忙しい人だから、無理強いするわけにも行かない。
同居する息子夫婦から頼りにされ、孫の面倒まで見ているのだから。

 * * *

「実は、いままで黙っていましたが」
ある日R子さんが、顔色を改め、その口を開いた。
「サークルの先生がですね・・・」
「どうしました?」
「電話をかけて来るのです。何かにつけて」
サークルには、男の指導者が何人か居て、その内の一人であるらしい。

「お茶でも飲みませんかって」
「・・・・・」
「一度お付き合いしたんですが、その後は、
さらに電話が頻繁になりました」
「・・・・・」
「私より、幾つか下だと思うんですが」

これもいわゆる、男女交際ということになるのだろう。
R子さんは、寡婦だ。
もう随分と前に、旦那と死に別れている。
相手の男も、どうやら独り身であるらしい。

だから不倫ではない。
大袈裟に考えることもあるまい。
「それはR子さん、あなたに魅力があるってことですよ」
と言おうとした先に、彼女が言った。
「あたし、いやなんです。こういうのって」
こういうのとは、男女の付き合いのことだ。

世間にまんざら、ない話でもない。
年配の独身男は、おおむね寂しいのである。
女性の茶飲み友達がほしい。
しかし、女性の方が、意外に冷めている。
これを、現実的ということも出来る。

今さら男性と付き合って、どうしようというの・・・
煩わしさの方が、先に立つ。
男からのアプローチが、次第に鬱陶しくなる。
世間に珍しくもない・
珍しいと言えば、女が古希を過ぎ、男が還暦を過ぎていることだ。

「それで、コミュニティセンターの方には、行かなくなりました」
「仕方ないね。また適当な場所を探せばいい」
こればかりは、彼女の好きなように、させるしかない。
私は、囲碁の先生ではあるけれど、人生の師ではないのだから。

「いい人なのですが」
「・・・・・」
「でも、もうそういう話は、嫌なんです。私」
「・・・・・」

「でも彼、私の碁は褒めてくれました。筋が良いって」
「うん」
「お世辞でしょうけれど」
「いや、そうでもない。筋が良いのは本当です」
手前味噌になるが、これは言っておかねばならない。
「私の生徒は、全員、何処へ出しても恥ずかしくないようにと、
そういう教え方をしているのです」

 * * *

私は、R子さんに対し、失礼ながら、女性を感じていなかった。
単に一人の生徒であった。

年下の男性から、交際を求められるとは、彼女に魅力があるからだろう。
私の目が、節穴だったのかもしれない。
彼女を少し、見直さなければいけない。



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この道のベテラン

パトラッシュさん

彩々さん、
そうですよねえ。
この男、いかにも焦り過ぎ、いかにも物欲しげ・・・
これでは女性が引いてしまうだろうって、男の私だって、想像できますもの。
もっと、時間をかけ、男女差を意識させないように、近付けばよかったのにねえ・・・
って言っても、もう遅い。

温度差、なるほど上手いことをおっしゃる。
さすがにゼロ学で鍛え、面接をこなしてきた方のおっしゃることは、違いますねえ。

私は、適当なアドバイスも出来ず、「あ、そう」で終わりでした。

2015/10/31 18:12:05

「終りなき恋」も

彩々さん

かの有名女優の岸恵子さん著の小説が
年齢的なことでは同じような設定でした。

この男性、男女の間柄というより、歳を重ねた
人間同志としてR子さんに、近づきたいと思われたの
では無いでしょうか?

この男性、ちょっとタイミングが早かったのと、
燃焼温度が高すぎたのでは無いでしょうか?

恋は温度差が近くないと、それこそ陽(火)の目を
見ないのではないでしょうか!?

シニア女性の多くは(?)、恋心という気持ちを棚に
上げてしまい、その事さえ忘れかかているのに…
R子さんが思い出すまでじっくり時間を掛けて上げなければ。

でも、そうこうしている内にどちらかが具合が
悪くなるとか…実際の話し、いずれにしましても
あぁ〜、シニア層の恋は所詮、先すぼりの儚いもので
ございます(笑)

2015/10/31 17:18:45

女性の方が・・・

パトラッシュさん

喜美さん、
歳を取ると、女性の方が、賢いですね。
人生をしっかり見つめ、世の中もしっかり見ている。
男はどうかすると、自分が見えなくなる。
そして、晩節を汚してしまう。
そういう傾向があるようです。

喜美さんは、良き子良き孫に恵まれ、ほんとうに幸せです。
もう男なんか、要りませんよね。(笑)

2015/10/31 16:36:52

嫌です

喜美さん

めんどくさいですね やっと一人で
解放されました 好きな事を自由に
楽しい生活したいです 昨日息子が来て
今日は孫夫婦今帰りました 3日 8日と
子ど達が来ますし 決して来てくれと入っていません それが生きがいですから楽しんでいます

2015/10/31 16:06:52

そうなんです

パトラッシュさん

風香さん、
認めるも何も、私の節穴は、つとに有名です。
女性を見る目は、特にありません。
私はこうやって、メールのやり取りをしているくらいが、ちょうどいいのです。
人生を誤らずに済み・・・(笑)

2015/10/31 12:20:03

そうですよね

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
女性心理は、きっとこんなものだろうと、私も思っていました。
男のアプローチにも、問題があったかも・・・
「女性の方から、寄って来るような男になりなさい」
とその男に言ってやりたいけれど、今更遅いでしょうね。(笑)

2015/10/31 12:15:03

振られた男も情けない

パトラッシュさん

我太郎さん、
二人の歳を考えると、肉体関係とかは、考えにくいです。
あくまでも、茶飲み友達を求めていたようです。
しかし彼女の方が断った。というより、逃げた。
多分その男に魅力がなかったのだと、私はこう思っています。

私だったら・・・
おっと、止めておきましょう。(笑)

2015/10/31 12:08:25

居酒屋なら・・・

パトラッシュさん

SOYOさん、
でしょう・・・
私も話を聞いた時、信じられなかったのです。
でも、男心を引く、何かがあったのかもしれません。彼女には。
少し見直した次第です。

でも、彼女とお茶のみには、行きませんがね。
(居酒屋で奢ってくれるなら、話は別)(笑)

2015/10/31 12:02:39

なるほど・・

さん

>彼女を少し、見直さなければいけない。

師匠みずから節穴を みとめられるのですねぇ。。

古希過ぎてから他人にかかわりたくない、わかる気がします。

2015/10/31 11:32:59

淡々と、がよいですね。

シシーマニアさん

「あたし、いやなんです。こういうのって」
とおっしゃるR子さんに拍手、です。

2015/10/31 10:49:23

囲碁は学問ではなく、技術だ。

我太郎さん

こういう世界が好きなんですが、囲碁が強い人の脳は出来が違うように思います
どう違うのかは説明出来ませんが、所謂筋が良いのはそのためかと思います

>でも彼、私の碁は褒めてくれました。筋が良いって

この件だけだとはは〜ん、となりますね
パトラッシュさんもそう思うなら邪念はなかったのかも?

2015/10/31 10:44:41

ふ〜む

さん

パトラッシュ師匠 こんにちは。

師匠の生徒さんが、何処に出しても恥ずかしくない碁を打たれるのは納得です。

しかし、70歳過ぎの女性がねぇ。
女性も個人差があって、終生恋心を持ちたいと思われる方も結構多いようですが、実際問題、あるのかな?と思っていました。

我が身を顧みても、50歳くらいまでは、女を主張できると思いましたが、今は女より人間になっています。
だから、R子さんのお気持ちは、よくわかります。

反面、昔のNHK朝の連続ドラマ「どんどはれ」の草笛光子さん扮する、老舗旅館の大女将と頑固者の鉄器職人(長門裕之さん)の心の触れ合いなど、素敵だなぁ!と憧れました。
生臭くない、信頼と安らぎの持てる仲なら、いいかも?と思っています。

2015/10/31 10:31:18

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