ウイールマン

成田到着 

2016年06月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

約11時間のフライトの後、飛行機は徐々に下降を始めた。

下を見れば、暗闇の中にわずかながら日本の灯りがみえ始めた。

あれは今から28年前の事。

アメリカに来て15年、すべてが順調だった日々。

そして大好きだったアメリカにすっかり溶け込み、自分はもうアメリカ人になったと思ってた。

日本など見向きもしない。
あのかたぐるしい日本。息の詰まる日本。

何から何までがんじがらめ。
自由に生きる事もできない。

それに比べて、カリフォルニアのさんさんと耀く太陽の下での自由な生活。

アメリカは横の社会。

仕事での上司も、ファーストネームを呼び捨てで呼ぶ。

年上であろうと年下であろうと、みな同列。



仕事に行く朝もコーヒー片手に車を運転。

勿論満員電車の通勤などない。

週末には大好きな海に遊びに行ける。

そんな自由奔放に生きれる、アメリカが大好きだった。



仕事でタイまで行く事になった。

時間的な余裕もあったので、日本経由で行く事も出来た。

しかし何故か日本の地には足をつけたくない。

日本に対する嫌悪感。

サンフランシスコから香港経由のルートを選ぶ。

香港までのフライト時間は約15時間。



サンフランシスコを夜中出発の便。

そして何時間過ぎただろう。

ふと下を見るとそこには満天の光。

どこかの国の夜景だ。

  ”なんてきれいな夜景だろう“ 

こんなきれいに輝く夜景など今まで見たこともない。

光の一つ一つが生き生きと輝いている。

  ”凄い、きれいだ”

そばを通りかかったフライトアテンダントに 

”一体今どこの上を飛んでいるの? まるで天国の上を飛んでるよう“

そのときフライトアテンダントが 

“いま ほっかいどうのうえ、あなたのくににほんよ”


あの衝撃、体中にせんりつが走る。

これがあの日本。



大嫌いだった日本。


でも今は夜空の中なんて美しく輝いているんだ。

急に日本が恋しくなった。めがしらが熱くなる。

まるで昔別れた恋人に会ったような。



そしてまた今、あの時と同じように、日本の夜の灯かりが見え始めた。

もうすぐ到着、再び日本の地を踏める。

ある日突然体調をくずし、もう二度と日本の地は踏めないかも知れないと思ったあの頃。



飛行機は成田に着陸。そして日本の地を歩き始める。

成田は6年前よりずーっと立派になっていた。

通路には ”お帰りなさい“ の言葉。

カウンターから荷物をとり、通関に。

 

通関の人達もなんて皆礼儀正しいんだ。

あの無作法なアメリカの通関と大違い。

そして笑顔であたたかく迎えてくれる。




外に出て深呼吸。 日本の匂いのする空気をいっぱいすう。
体中に日本の匂いがしみ込んでいく。

やっと憧れの故郷日本に帰ってこれた。


大学時代の懐かしい友人が出迎えてくれた。

東京の最初の夜。

あたたかく迎えてくれた姉と一緒に、阿佐ヶ谷の街に出かける。

焼き鳥だ。

”おいしい“  そして酒も美味しい。

旅の疲れも吹っ飛ぶ美味しさ。何もかも美味しい。


そして何故か日本に来ると、何時もよく寝れる。 

幼児が母の懐に抱かれて寝るように、安心して熟睡できる。

久しぶりの実家で、今夜はぐっすり寝れるだろう。



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