ウイールマン

北陸 

2016年07月20日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

幼なじみの友が、北陸に単身赴任をしていた。
それまでは、あまり馴染みのない、裏日本北陸の町。

その町に住んでいる、友に会いに行く。
裏日本は、言葉のように、寂し気な日本の裏面なのだろうか。

仙台とか盛岡は、幾たびか訪ねた。
東北とはいえ、きらびやかな街並みの都会。

華やかな都会東京に生まれ、共に青春時代を大都会で過ごした友。
その友が住んでいるという。
何か淋しそうな裏日本。

東京駅から上越新幹線に乗る。

新幹線は、穏やかな田園風景を通りぬけ、
だんだんと、山にさしかかって行く。
あんな山を貫いて、この新幹線は走っていくのだろうか。

暗闇が訪れ始める。
トンネルに入る。
明るくなったと思ったら、すぐにまた暗闇の中に。

もうすぐ終着駅だというのに、まだトンネルの中にいる。

あまりにも長い間、暗闇の中を走っている。
永遠に、暗闇が続くような錯覚に陥る。

新幹線は、徐々にスピードを緩めてきたが、いまだ外には何も見えない。

急に朝日のような明るさが戻って来た。

越後湯沢駅は、淡い朝日に照らされた、山奥の中にある。

今は春。

長い冬の間、深い雪に閉ざされるだろう。
町が静まり返っている。

こんな穏やかな春の日が、似つかわない。
吹雪に閉ざされ、寒く長い冬がよく似合いそうだ。

湯沢駅から北陸の、ローカル線にのりかえる。
山深き日本海の海沿いを走っていく。

やはり、華やかさはあまりない。
始めて見る、裏日本北陸。

電車は時間調整と、名も知れない駅に止まった。

人影のない駅前の広場の中で、若いお母さんが乳母車を押して歩いている。

若いお母さんは、この名も知れない町に、あまりそぐわない。
しかし楽しそうに、乳母車を押している。

名も知れぬ片田舎の町にも、若い人達の、楽しい人生があるのだろう。

夕方には若い父が帰り、一日の事を皆で楽しそうに話すのか。

そして電車は又駅に止まる。
友が住む町なのだ。

駅のホームにたち、人気のない改札口に急ぐ。
友は駅の改札口に立っていた。

暫く見なかったあの笑顔。
昔の懐かしい、共に過ごした青春時代を思い出す。

友の車にゆだねられ、今夜の寝床に向かう。

寂しそうな、海辺の田んぼの中で、
ぽつんと立ってるアパート。

此処に、わが友の生活があった。
家族から離れた“単身赴任”

小さなアパートで、人生を謳歌している。
とても豊かな、心の持ち主なのだ。

往々に、人は物で心を豊かにしたがる。
それで幸せが来ると思うのだろう。

欲しい物を、手に入れたときの幸せ感。
豊かな物に囲まれた生活。

しかしその後は、ただの物となる。

物で満たした、心の豊かさ。
それは、いつまでも続かない。

華やかな、都会育ち。

何もない、うらびれた北陸の町で、心豊かな
そんな彼は、朝日のように、さんさんと耀いていた。

裏日本の町で、生き生きと、楽しそうな人生を。
その時この北陸の町が、とても好きになった。

そしてこの北陸の町を、今も又訪れる。



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