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パトラッシュが駆ける!
読者さん(前)
2016年12月24日
テーマ:テーマ無し
電話がかかると、片っ端から、切っている。
相手の名乗りを聞くや、物も言わずに、受話器を置く。
わざと乱暴に、叩きつけるように置く。
そう言うクセがついている。
営業あるいは、勧誘目的で、かけて来ると思われる。
「YBMの斎藤ですが」
その多くが、横文字の社名を名乗る。
アルファベットの、三文字、四文字であることが多い。
「○○証券」とか「△△不動産」なら、社名から、業態を推測することが出来る。
そうしないのは、意図的に、自身をくらませるためではないか。
と、私は疑っている。
その全てを、詐欺や悪徳商法とは言うまい。
まともな商売だって、ないこともないだろう。
しかし、私は、見ず知らずの相手との、電話での商談なんぞに、
乗りたくない。
そもそも、儲け話とは、とっくに縁を切っている。
聞くだけ無駄だ。
それで、横文字の社名が、聞こえた途端に、切ってしまう。
個人名の場合は、別だ。
「鈴木です」
旧知の仲なら、問題はない。
「○○の中村です」
○○は、地名であったり、社名あるいは、団体名であったりする。
それに、心当たりがあれば、これも問題ない。
まったく、心当たりの、ない場合がある。
これが、要注意だ。
しかし、いきなり切るわけにも、行かない。
「私は、冬田と申しまして、中央区に住んでおります」
その電話は、こんな自己紹介から始まった。
* * *
「ご本を、読ませて頂きました」
それ見たことか。
読者からである。
これがあるから、個人名の場合は、邪険には扱えない。
「もしかして、京橋図書館から、借りられましたか?」
中央区と聞いて、ぴんと来た。
京橋図書館は、東京でも、由緒のある図書館で、
明治の末に設立され、三十数万冊の蔵書を誇っている。
銀座にも近い。
「そうです。私は年金生活者であり、お金がないので、
本は買わずに、借りて読むことにしています」
この京橋図書館が、四年前、かたじけなくも、
私の著書「風に吹かれて遍路道」を置いてくれた。
その縁かもしれない。
今秋に発行した「旅ときどき仕事ところにより道楽」という、
長ったらしい名の本も、蔵書してくれた。
「実は、来月、遍路に出ようと思っております」
「おー」
「ついては、経験者のお話を、お聞きしたいと思いまして」
望むところだ。
私が遍路の紀行文を、一冊の本にまとめ、出版したのは、
もちろん、自分のためであるけれど、一方で、
もしかしたら……という思いもあった。
新たに遍路旅を志す者の、参考になったなら、
こんな喜ばしいことはない。
「どうぞ、いらして下さい。何なりと、私の知る限りのことを、
お話ししますので」
「ありがとうございます。
改めて、日時を打ち合わせ、伺いたいと思います」
その声に、張りがあった。
希望に燃えているようにも、思えた。
「季節の冬に、田んぼの田、フユタと申します」
もう一度、その名を言い、電話は切れた。
* * *
読者が、著者を訪ねて来る。
私のような、素人著者であっても、それは、あり得ないことではない。
先月には、名古屋のNさんが、訪ねて見えた。
私の新著を読み、囲碁サロンに、興味を持たれたのであろう。
対局し、その後一杯やりながらの、歓談に及んだことは、言うまでもない。
Nさんは、長く、NHKのアナウンサーを務めておられた。
その、にこやかな顔と、歯切れのよい口調に、先ず驚かされた。
人格や識見において、容易にその深さを、見通すことが出来ない。
つまりは「端倪すべからざる」人物と言うことが出来る。
人には、会ってみよ。
改めて思った。
著書が、その端緒になる。
ほとんど道楽に過ぎない、私の出版にも、僅かな意味があったことになる。
* * *
「マラソンの最後の一人うつしたるあとの玻璃戸に冬田しずまる」
寺山修司の短歌が、つい、口をついて出る。
あれから、一週間が過ぎ、十日が過ぎ、二週間が過ぎた。
冬田氏は来ない。
電話もかからない。
短気者の私には、考えられないことだ。
私だったら、日を置かず、それこそ翌日にも、行動を起こしているはずだ。
ガセネタであろうか……
かすかな疑念が、頭の隅にある。
電話では「来月遍路に出る」と言っていた。
十二月である。
それは、遍路道に、人影が絶える時期だ。
より好適な季節があるのに、年金生活者が、何を好んで、
シーズンオフに旅に出るか。
不可解であった。
私に向かい「ご住所を教えて下さい」と言った。
聞くまでもあるまい。
本の奥付に、書いてあるではないか。
それでも、一応、住所を告げ、駅からの道順を説明しようとしたら、
それは大丈夫です、検索しますからと言った。
やることに、ちぐはぐ感がつきまとう。
しかしそれも、会ってみればわかるだろう。
何かの事情が、発生したのかもしれない。
体調不良ということも、考えられなくはない。
「こちら、BMコネクションの、××です」
「えー、CIAプランニングの、□□です」
かかる電話は、相変わらす、横文字の会社ばかりだ。
くそったれめー
私の受話器を置く音は、一段と激しくなっている。
いや、もちろん、壊れない程度にだが。
(次号に続く)
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疑えば……
彩々さん、
そうなのです。
少し、常識から離れたところがあるようです。
突き放してしまっても、よろしいのですがね。
一方で、読者はこれを、大事にせねばという頭もあります。
「お客様は神様です」と同じです。
その著者の気持を利用し、何か企んでいる……ということも、考えられなくもないのです。
用心して、対処したいと思います。
2016/12/24 17:58:26
腑に落ちない電話
相手の読者さんとおっしゃている方、
悪く考えれば、あちらからいらっしゃるという
のなら、ご自分の都合だけを優先した世間知らずの方だと言えるでしょう・
日にちを置いて、日時の打ち合わせでと
連絡してきても、それもご自分の都合に
合わせて掛けてこられることでしょう。
いらっしゃる日にちが来ても、無断で
ドタキャンされるような気がしますが…。
あまりいい予感がしません。
2016/12/24 16:15:53
どうなるか……
シシーマニアさん、
リアルタイムに近い形で、事態は進行中です。
今後の予測は、つきません。
来週には、後編をお届け出来ると思います。
2016/12/24 14:12:08
昔から
吾喰楽さん、
私のところは、商店経営の名残で、電話はすべて、出るようにしています。
最近は、7:3で、迷惑電話が多いです。
いずれ、ナンバーディスプレイにするなど、何か対策を考えねばなりません。
2016/12/24 14:06:38
もしかして、リアルタイム進行型?
次号が待たれますね、私も気が短いので・・。
「気が短い」と、ご自分で仰る師匠も、実は先を早く書きたいのでは?
それとも、師匠ご自身も、待っていらっしゃるとか・・。
もしそうだったら、凄い話になりますね。
2016/12/24 12:20:09
迷惑電話
わが家の電話は、常に留守番電話に設定してあります。
知らない番号からの電話には、出ません。
重要な用事の方は、コメントを残してくれます。
友人知人は、携帯電話にアクセスしてきます。
お互い、詐欺には注意しましょう。
読者の方からは、その内、連絡がありますよ。
2016/12/24 11:42:34