メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

パトラッシュが駆ける!

鉄瓶の湯 

2017年03月11日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私の囲碁サロンは、席料を頂戴していない。
営利目的ではないからだ。
では、何が目的だ?と聞かれると困る。
私の道楽の場ですと、こうお答えするよりない。

道楽に、付き合って下さる方々が居る。
お客様である。
お顔が見えるや、丁重に出迎え、お茶をお出ししている。
「おもてなし」のつもりでいる。

夏場はいい。
ペットボトル入りの緑茶、または麦茶を、スーパーで買い、
冷蔵庫に入れて置く。
涼しげな、ガラス製の茶器を用い、これを注いで出す。
日持ちはするし、手間もかからない。
こんな楽なことはない。

小学生のためには、甘い飲料を用意しておく。
「午後の紅茶」
これは、もっと手間がかからない。
生徒らも、とっくに、慣れている。
常備してある、紙コップを取り、勝手に冷蔵庫から、出して注ぐ。

ペットボトルが空になるや、近くのスーパーへ、買いに行かせる。
五百円玉を持たせ、好みのやつを二本、買っておいでと、こう命じる。
行きたくない?それなら、いいよ。
飲まずに居なさいと、こう突き放すだけ。
実にもう、楽でいい。

問題は、冬だ。
いや、正確に言えば、夏以外のスリーシーズンだから、
一年の大半ということになる。
大人には、熱いお茶をお出ししている。
緑茶である。
これは少々、手間がかかる。
淹れるにも、そして、茶葉の始末にも。

今時、鉄瓶で湯を沸かしている。
一つの趣向である。
金物店時代の、売れ残りを、有効利用しようとして、
この方法を始めた。
湯沸しポットなんぞより、よほど風情があると思っている。

手間はかかるが、皆さんが、喜んで下さる。
「鉄分の補給にもなります」
女性の皆さんに言うと、さらに喜んで下さる。
席主の私は、大いに面目を施している。
しかし世の中、万事が丸く納まるとは、限らない。

 * * *

A氏は、真冬でも、ペットボトルを持参する。
そして、私の自慢の茶を「要りません」と言う。
手にするのは、決まって、ミネラルウォーターだ。
これを、ラッパ飲みしつつ、碁を打つ。

A氏は、どうやら、私に教えを乞うつもりが、ないようだ。
私を、打ち破ろうとして、やって来ている。
つまり、ライバルと思っているようだ。
碁仇の茶は、飲めないと、了見の狭いことを、
言っているわけでは、ないと思うけれど。

その彼の喫水量が、突然増えることがある。
一手ごとに、ペットボトルを口に運ぶ。
それは、盤上において、彼が、優位に立った時だ。
麻雀における「聴牌タバコ」と同じく、
その心中において、ほくそ笑んでいるに違いない。
「しめしめ……」
その逸る気持を、抑えようとして、水を飲むのであろう。

飲ましてなるものか……
私だって、その姿を見るや、より闘志を燃やす。
奇襲をかける。
わざと難解な局面へと、導いて行く。
それ見ろ、A氏がペットボトルを脇に置いた。
そうして、長考に沈んでいる。

 * * *

B氏は、私の出した茶に、口をつけない。
固辞するわけではない。
卓上に置けば、きちんと目礼をする。
それきりである。

私に、茶道の心得はない。
しかし、囲碁をやる時の茶は、客の左手に置く。
これが鉄則だ。
右に置くと、碁に熱中のあまり、右手で碁石を取ろうとして、
茶碗の中に指を突っ込む。
これが、しばしば起きる。

B氏は、対局が終ると、盤の左側にあった茶碗を、
やおら持ち上げ、右側に移動させる。
それが彼の、作法のようだ。
その時に「ご馳走様でした」と言う。
飲まないにも、拘らず……である。

その作法には、もしかすると、意味があるのかもしれない。
戦いが済みました。
平時に戻ります。
茶碗も、平常の場に戻します。
というような、意味がである。

B氏が、茶を飲もうと、飲むまいと、元より自由ではあるけれど、
出した方は、気になる。
何でだろう。
気に障ることでも、あっただろうか……
詮索した結果、かすかな推論に至った。

 * * *

鉄瓶で沸かした湯には、かすかに、金気がするのかもしれない。
これを、鉄の匂いということも出来る。
魯鈍な私には、よくわからない。
他の多くのお客さんも、平気で飲んでいる。
しかし、B氏の舌と鼻は、鋭敏であるのかもしれない。

話は簡単だ。
試みに、電気ポットを用いてみた。
これで建てた茶を、口にするようなら、
B氏の鉄瓶嫌いが、判明する。
それでも飲まなかったら……
それは、緑茶そのものが、嫌いだということになる。

やはり……であった。
B氏が茶を、口にするようになった。
電気ポットに変えた、その途端にである。

世の中には、いろいろな人がいる。
私の基準をもってしては、時に間違う。
いや、大いに間違う。
私は、繊細さとは、ほど遠い人間だ。

いっそ、茶なんか、出すのを止めてしまおうかと、
思ったりもする。
しかし、それも愛想がない。
電気ポットに替えるか、鉄瓶のままで行こうか、
私は今、少し悩んでいる。



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

お湯がまろやかで

パトラッシュさん

みのりさん、
鉄瓶はいいですよ。
一度お試しください。

2017/03/17 09:22:26

鉄瓶

みのりさん

パトラッシュさん

鉄瓶でお湯を沸かして
おいしい珈琲を飲みくなります。

2017/03/16 10:03:16

季節が終わりそう・・・

パトラッシュさん

澪つくしさん、
いいですよ、鉄瓶の風情は。
実は今、火鉢が入手できそうなのです。
これに炭を活けて使えたら、さらにいいでしょうね。
ああ、しかし、春が近づいています。
炭火に鉄瓶をかける夢は、来シーズンに、持ち越しになりそうです。

2017/03/14 19:20:51

なんとも・・・

澪つくしさん

いい風情ではありませんか〜♪

鉄瓶の口から微かに湯気が立ちのぼる・・・

チリチリと鉄瓶が。。。うたう( ̄▽ ̄ ).。oO

いいですね〜♪

鉄瓶で行きましょう(^^)v

2017/03/14 16:33:18

どうしましょう……

パトラッシュさん

喜美さん、
そうなのです。
鉄瓶は、使い終わった後、空焚きし、水気を切っておかないと、錆びます。
それが、面倒なのです。
貧血の人には、身体に良いと聞いています。
使いたいのは、山々なのですがね……

2017/03/11 19:56:07

鉄瓶

喜美さん

私も使うときあります
毎日使いたいですけれど火にかけて其処に居ないと沸騰がわからないので
ガスが損するとか思いその時は沸騰すると音がするやかんを使うと便利とばかりその方がこの頃は多く使っています
其れと鉄瓶は夜水を空にして煮立てておかないと錆びてきますから やはり面倒ですね 娘を妊娠した時買いました 鉄分には良いかなと
馬鹿みたいでしょう でも今もさびさせず使います

2017/03/11 11:01:55

PR





上部へ