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パトラッシュが駆ける!

ため口の人 

2017年07月01日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

若者の、ぞんざいな、口の利き方を「ため口」というらしい。
年長者に対し、敬語、丁寧語を用いない。
「友達言葉」を、友達でない者に対し用いる。
そう言う言葉であるらしい。

「ねえ、おじさーん。○○新聞、取ってくんない?」
店にやって来た、若者から、いきなり言われたことがあった。
若いも若い、十代の少年である。
新聞販売店の店員であるらしい。
契約を取って帰れば、そこそこの稼ぎに、なるのであろう。

「おじさんは、ないだろ」
「…………」
「仮にもお願いする立場だろ。ふさわしい代名詞を使えよ」
「どんな?」
「旦那さんとか、お客さんとか、あるだろ」
「わかった」
「わかりましたと、何故言えないんだ?」
「わかりました」

心ならずも、説諭をした。
遠い昔、私も新聞配達をやったことがある。
同年代の少年が、遊び呆けている間に、彼は、仕事をしている。
怒って、突き放すのも、可哀想だ。
私も人が良い。
その新聞を、取ってやることにした。

もしかしたら、彼は、説諭されることを、逆に利用したのではないか。
ため口は、そのための、手段ではないか。
後になって気付いたが、もう遅い。
私は、その馴染みのない新聞を、その後しばらく、読むことになった。

 * * *

私は、文を書くことが好きで、もう長いこと、ネット上に、
作品を発表している。
言葉を大事にしたい。
という思いが、人一倍強い。

シニアを対象とする、あるSNSに、会員からの、投稿写真が並んでいる。
いずれも、自信作であろう。
プロの作品とも見まごう、秀作があったので、拍手をした。

後日に、返礼のコメントがあった。
「拍手をありがとう」
型通りではある。
しかし、何かおかしい。

彼とは、これまで、交流の実績がない。
いわば、初対面だ。
それなのに「ございます」が付かない。
「ありがとう」は、さながら、上司の部下に対するがごとき、
上から目線の、謝辞を思わせる。

私は、付き合うべき人間を、その言葉使いにより、選別している。
私が、その男と、友誼を結ぶことは「ございません」になった。

  * * *

「最高の批評とは、その作品を越える、別の作品だ」
という説がある。
「評論家とは、実作者、あるいは、実演者になれなかった人間の、
なれの果てだ」
とする意見もある。

人は何故、批評したがるのか。
それは、気分がいいからだ。
他人の作品を、低く評することにより、己を相対的に、高く見せる。
という効果が、批評という行為にあるからだ。

請われて、メディアに登場するくらいなら、評論家も、立派なものだ。
その多くは、実績を持っている。
成し遂げた業績を、背にしているからこそ、彼の語るところに、
説得力がある。

問題は、実績も名もない、市井の評論家だ。
彼らとて、主張はしたい。
自説を抱えたまま、沈黙していることが、彼は苦痛でならない
しかしながら、発表しようにも、その場がない。

やむを得ない。
その所属する世界で、せめても、その高説を披歴する。
「職場において」
「家庭において」
のみ活躍する、評論家である。
中には「居酒屋限定の」それさえ、居ないでもない。

自分では、出来ないのに、さも出来るような顔をして、他人の作品や、
行動を評する。
私はこれが、嫌いだ。
なるべく、やらないようにしている。
なるべく……である。
飲んで酔った調子に、つい禁を破ってしまうところ、私も実は、
居酒屋評論家の一人である。

* * *

私如き、素人の文に対しても、批評を下さる方がいる。
肉筆の書状を、封筒に入れ……
なんていうのも、ごくたまにだが、ないこともない。
私の文を読んで、感じたことを、連綿と語って、それはもう、
その忝さに、涙を催すくらいだ。

一方で、これはどうかと思われる、批評がある。
敬語、丁寧語が、一切、用いられていない。
初対面に際しての、自己紹介もない。
唐突に、それこそ、暗闇から、棒を突きだすようにである。

それらは、メールまたは、コメント欄への書き込みで来る。
嬉しくはないが、来てしまうものは、仕方ない。
文を書き、それを、ネット上に晒している者の、宿命である。

「ありふれてるやん」
これぞ「ため口」であり、当人は、親しみを込めている、つもりなのかもしれない。
「話が回りくどい」
「焦点がぼけている」
そう思われたのなら、仕方ない。
いきなり、本丸を攻めず、外濠から埋めて行くのが、私のやり方なのだから。
部分ではなく、全体から、何かを感じて下されば、それで良いと思っている。

最後に「不一」とあった。
手紙の末尾に使う言葉である。
十分に意を尽くしていないと言う、意味であり、そこに謙遜の匂いが、
ないでもない。

ため口で、ものを言いつつ、一方で、妙なところを、格式張っている。
さながら、擦り切れたジーパンを佩きつつ、胸にネクタイを揺らせている、
そんな風体を、想像しないでもない。

「そんなら、自分で書いてみなよ。私以上の文を」
いっそ、ため口で返そうかと思った。
しかし、非礼に対するに、非礼を以ってするのは、自分もまた、
その次元に堕ちるということだ。

私は、コメントを返さずに、しばらく放置しておいた。
そうしたら、三日後に、その書き込みが消えていた。
何故だかわからない。
ネット上では、時に、不可解なことが起きる。
不可解な人が居る。
そう言うもんだと、思うよりない。



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親の顔が……

パトラッシュさん

漫歩さん、
成長過程における、家庭と学校の役割、これが確かに重要ですね。
ため口を利く子は、それなりの環境に育ったのだと思われます。
その親と、先生の顔が見たい……
というところです。

2017/07/03 15:08:59

同感です

漫歩さん

幼児と親(主として母親)、児童と教師、この二つ期間での会話がどうなっていて、成長した子供の話し方にどう影響しているのか、いないのか〜。
そんなことを考えながら読ませて戴きました。

2017/07/03 09:33:20

大丈夫

パトラッシュさん

彩々さん、
ブログなんて、マイペースがよろしいのです。
自由気まま、書きたい時に書く。
これでよろしいのだと思います。
私だって、常に書いているわけではなく、興が乗る時に、まとめ書きしておいて、(貯蔵しておいて)一週間ごとに、蔵出ししているというのが、実際のところです。

フーテンのトラ子さん、大いに結構。
自由気ままに生きることこそ、人間最大の幸せなのだと思います。
溺れているようには、見えません。
立ち泳ぎで、じわじわと本丸に迫る。
そんなトラ子さんを、想像しております。

2017/07/02 10:06:53

一週間のご無沙汰でございました。

彩々さん

きちんと一週間ぶりにブログをUP
されるパト様には、頭が下がる思いを
しております。
もちろん、拝読するのを楽しみにして
いる一人でございます。

私にとっての「ためになるBlog」ラン
キングの上位にさせていただいてます。

私メはご存知の通り、フーテンのトラ子の
如く、気が向く時にしかブログも書けず、
時に私は何処に向かおうと…途方に暮れる
想いになることがあります。

と、ここまで書いていると何をコメント
しようとしていたのか…また、解らなく
なってきました。

>いきなり、本丸を攻めず、外濠から埋めて行くのが、私のやり方なのだから。

この一文で、はっと気づかされました。

本丸までの外堀で溺れている自分の姿に
笑ってしまいます。反省。

2017/07/02 06:29:16

言の葉ながら

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
東京弁に、堅苦しさ、そして、よそよそしさを感じる人は、少なくないようです。
しかし、東京の山の手に、生まれ育ってしまった私のような人間には、これが土着の言葉であり、今さら変えようがない……というのが、実際のところです。

私は、各地の方言が好きです。
親しみを感じます。
さながら、白米ばかり食べていると、食傷し、たまに麦飯や、雑穀入りご飯を食べたくなるようなものです。
それは、敬語でも丁寧語でもないですが、そこに相手への敬意は、十分に感じます。

一方で、標準語を用いていても、そこに、敬意が籠らない例は、たくさんあります。
結局は、語り手(書き手)の精神の問題だと思います。

「文は人なり」と同じく、「言葉使いもまた人なり」なのだと思います。

2017/07/01 13:15:31

東京の人

シシーマニアさん

私は、中学二年まで札幌に住んでいましたので、東京人の山の手言葉には、憧れが有りました。

札幌弁は、イントネーションが重いだけで、あまり東京弁とは違わない、と言うのが通説だったのですが・・。

思春期だった私は気取って、東京弁のコピーに余念がありませんでしたが、何かが違うのですね。

やがて私は、東京の大人の女性達は、さして親しくない人に対しても、ですます調を使わない、と言うことに気づきました。

私は、デパートで買い物をしても、ホテルのフロントでチェックインしても、タクシーで行く先を告げる時も、大体が、ですます調です。

さすがに、白髪になってからは、年の功という感じで「そちらも、見せて貰おうかしら・・」などと口にしますけれど、基本は丁寧語です。

ところが、東京育ちの人は、見事に敬語を挟みながら、「それで、宜しいの?」といった風に、親しげに話しかけるので、感心してしまいます。

2017/07/01 10:10:35

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