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パトラッシュが駆ける!
夜陰の般若心経
2017年10月07日
テーマ:テーマ無し
「あーた、夜中に、お経を唱えてたでしょ」
「え?……」
「ゆうべのことよ。十一時過ぎよ。寝てすぐよ」
「覚えがない」
「般若心経でしょ、あーたがやれるのは」
「そんなもん、寝ながら、出来ないぞ……」
「だって、聞こえたんだから」
「鼻歌じゃぁあるまいし、あれは精神統一して、心を鎮め、
それからやるもんだ」
「夢の中で、精神統一してたんじゃないの」
「んな、ばかな……」
「ちょっとやってみて、般若心経。そのさわりでいいから」
朝飯の最中に、妻が奇妙なことを、言い出した。
私に、覚えがない。
般若心経は、私の唱えられる、ただ一つのお経ではある。
父母の月命日に、仏壇に向かい、合掌し、おもむろに唱える。
あるいは、行きずりに寺があり、それが真言宗であったなら、
参らせてもらい、本堂の前に立ち、やる。
そのくらいのものだ。
夜の夜中に、いくら夢を見てたからって、読経するであろうか。
「ぶっせつ、まーかーはんにゃーはらーみったー」
「そうよ、そんな調子だったわよ」
「お経なんて、みんな、こんなもんだ」
否定しつつも、私には、自信がない。
もしや……ということがある。
夢は、深層心理の表れ、とする説がある。
* * *
女房が私の寝言を聞いていた。
これは、気持の良いものではない。
私だって、聖人君子ではない。
時に、卑猥なところに、出入りもする。
そこで出会った、女性の名が、ふとした拍子に、出ないとも限らない。
いや、天地神明に誓って、一線など越えていない。
どころか、その前哨戦にすら、及んでいない。
しかしながら、亭主が寝ながら、女の名を呟いた。
それを聞いた女房は、どう思うであろうか。
そりゃ、度量の大きな、カミさんならいい。
私の妻のそれたるや、蚤の胃袋のように小さい。
就寝中は、声を出さない方がいい。
そういうクセを、付けた方が良い。
と思っていながら、この仕儀である。
知らぬは亭主ばかりなり。
妻のやつ、言わないだけ。
夜な夜な、聞き耳を立て、私の呟いた、あれもこれも、
知っているのかもしれない。
* * *
もしかしたら、あれかな……ということがある。
私は昨日、テレビで、昔昔亭桃太郎師の落語を聞いた。
金持の、あり余る金が悩みという、奇体な噺であった。
その収入構造に問題があるのであろう。
その家には、金が、続々と入って、これを止める方法がない。
貯まる一方であり、いくら努力しようとも、費やし切れない。
何とか、大金を減らす、方法はないものか。
あるいは、収入を途絶させることは、出来ないか。
という、悩みである。
そう言う身分になりたいものだ。
という庶民の願望を、逆手に取り、笑いへと誘っている。
一つの逆説であろう。
「金=幸せ」ではない。
落語を聞き、羨望するどころか、むしろ、哀れになった。
その金満家の人々が……である。
* * *
私は、現在ただいま、満ち足りた生活を送っている。
金はないけれど、ないなりに楽しく、日々を過ごしている。
その満足感から、般若心経の一節が、閃いたかもしれない。
金なんか、所詮は、空しいものではないか。
「色即是空」ではないか。
五蘊つまり、物質と精神の諸要素は、突き詰めれば、皆、空ではないか。
金なんか、あればあるだけ、苦厄に繋がりかねない。
寝ながら、そんなことを、考えたかもしれない。
それで、つい、心経が出てしまった。
そうとしか、考えられない。
私は、布団に入るや、次の瞬間には、寝てしまう。
実際には、五分、十分かかっているはずだが、横で寝ている、
妻の目には、そう映るらしい。
そこには多分に、やっかみがある。
憎たらしい亭主め……
容易に寝付けない者から、すぐに熟睡する者への、嫉妬である。
「昨夜、地震があったでしょ」
「知らない」
「あんなに、大きかったのに……」
「知らない」
「福島の方じゃ、震度4だったって……」
「………」
夜中の般若心経……
発したのは、どうやら間違いないようだ。
さぞ、不気味であったろう。
録音して、それを聞いてみたい。
豊田真由子さんと同じく、穴があったら、入りたくなるかもしれない。
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寝言
漫歩さん、
ご忠告を、ありがとうございます。
その後、般若心経は、出ていないようです。
女の名は……
わかりません。
妻は、何も言いません。
少々、不気味でもあります。
2017/10/08 18:17:47
奥様の意図
奥様が、般若心経の寝言を朝食の話題にしたのは、
「私はあなたの寝言は全部聴いていますよ」ということを御亭主に知らせたかったのでしょうね。
賢い奥様は、一を聞いて十を知る、御亭主の感覚を
よく分かっていますから、度を外す遊びは家庭の平和を乱すことを悟って呉れるだろうと思われたのではないでしょうか。
パトラッシュさん、これからは女狐との悪ふざけはやめにして、寝言は般若心経だけになさい。
妄言多謝!
2017/10/08 12:03:49
なじかは知れねど
シシーマニアさん、
読経には、いくつもの効果があるようで、
他者(故人)のために、その冥福を祈っているように見え、実は、己自身のためにも、なっているのです。
心の平安を得るという……
お母様も、きっとそんな、お気持だったのでは、ないでしょうか。
人の一心に祈っている姿、それは、美しいものです。
読経もまた、その祈りの一つだと、私は思います。
仏教に限らず、キリスト教の教会の礼拝堂で、人知れず祈っている姿、あれも私は好きです。
2017/10/07 13:51:43
なるほど
喜美さん、
上手い方法があるのですね。
子供の名なら、いくらつぶやいても、差支えないでしょうから。
お金というのは、厄介なものですね。
なくても困るし、あり過ぎても困る。
結局は、自分が足りていると思えば、それで良いのでしょう。
喜美さんは、もう、悟りの境地に達しておられるようです。
2017/10/07 13:39:03
お経
父が亡くなってから、突然母が毎日お仏壇に向かってお経を唱え始めました。
月命日の時は、お墓参りに行って、帰りにお坊さんに我が家まで来て戴く、というややこしい事までしていました。
宗教的な場では、失礼な事はしたくないし、同席したときは私も、後ろに座って一緒に合唱しました。
「お経」とても懐かしい響きでした。
2017/10/07 10:41:06
寝言
寝言では仕方ない事ですけれど
心の何処かに思っているのですね
男友達に女子生まれた時 昔の彼女の名前にした 寝言に行っても大丈夫と
言うの聞いたことあります
お金は使うだけあれば良いでしょう
私は昔の戦時中の生活が身に染みて
質素で満足していますからこれで満足(それは無いでしょう)楽しくやっています お金はお足ですからあちこち
廻ります いつの日か私にも廻るかもしれないけれど 特別食べたい物も
着たい物も買いたい物もない根っからの貧乏性です
2017/10/07 09:57:23