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パトラッシュが駆ける!

注意病 

2017年10月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「人間やから、言われたら、そりゃ、カチンと来るやんけ」
逮捕前にであろう、容疑者が語ったと伝えられる。
二十五歳。
困った男だ。

高速道路の、追い越し車線にて、後続車の進路を遮った。
停止させた、その車へと詰め寄り、乗っていた者に、
暴行を働いたとされる。
不運なことに、そこへ大型トラックが突っ込んで来た。
追突された車に乗っていた、夫婦が死亡し、その十代の子、
二人の姉妹が負傷した。

という酷い事件だ。
逆になればよかった。
即ち、暴行者が跳ねられ、死ねばよかった。
と、こんな事件が起きる度に、思うのだが、この世は皮肉であり、
そうはならない。
大概は、悪人が生き延び、善良な方が死ぬ。

彼は自身を「人間」と称しているが、それは、
生物学上のそれでしかない。
霊長類、ヒト科に属する、一個体である。
社会的存在としての人間なら、そこに、自制というものが、
働かなくてはならない。
己を制御できない。
それどころか、他者との争闘を、己の存在証明のごとくに用いる。
そんな輩が、人間を名乗る。
そりゃ、おこがましいというものだ。
その、ふてぶてしい顔が、しばしばテレビに映る。
それを見る度に、私は、胸くそが悪くなっている。

 * * *

私にも、かつて、似たような事例があった。
高速道路でなくて、よかった。
我が街の、散歩コースにおいてであった。

他家の生垣添いに、駐車している車があった。
早朝のことである。
私は、当時飼っていた、犬を連れ、散歩していた。
車の中には、運転者が寝ていた。

エンジンがかかったままだ。
マフラーから、排ガスが出ている。
私のような、通りすがりの者はいい。
そこだけ、呼吸を控え、見て見ぬふりで、立ち去ってしまえばいい。
しかし、浴びせられっ放しの、生垣が可哀想だ。

私は、運転席のドアガラスを、軽くノックし、
怪訝な顔を向けた運転者に向かい、親指と人差し指を合わせ、
これを左に回して見せた。
エンジンを切るようにとの、手真似である。
物好きなことだ。
その家の者が、注意するならわかる。
縁もゆかりもない私が、他家のため、生垣のために、それを行っている。

運転者がこれに応じ、エンジンを切った。
と、ここまでは良かったのだが、次の瞬間に、ドアを開けた。
「るせぇなー」
三〜四十代の男である。
寝ているところを邪魔され、不機嫌のようだ。

「生垣が可哀想ですから」
私は「アイドリングは、東京都の条例で、禁止されてます」とは言わず、
生垣の代弁をするつもりで、言った。

「お前、ここんちの者か」
「散歩中の者です」
「なら、関係ねえじゃないか」
「同じ町内に住んでいる。広い意味で関係あるでしょ」
さぞ、憎たらしいオヤジと、思ったのであろう。
私の腕を、掴みかかって来た。
その腕を、振りほどき、後退した。
私一人なら、身を守れるが、生憎と犬を連れている。
揉み合いのとばっちりで、犬が踏まれでもすると、厄介なことになる。

「ふん、いくじなしめ」
男の声を、背中に聞き流し、私は現場から遠ざかった。
腕力で争うのは、私の流儀に反する。
さりとて、理屈の通じる相手ではない。
その当時、私は、携帯を持っていなかった。
警察を頼ることも出来ない。

「まったく、乱暴者が居るもんだ」
帰宅して、そのことを、つい妻に洩らしてしまった。
これが失敗。

「そんなこと、もうやらないで下さい」
散々に、彼女の説諭を受けることになった。
自分の得にもならないことで、怪我でもしたら、どうするのか……
見て見ぬふりを、すればよいじゃないですか……
ということだ。
しかし、それが出来ない性分だから、困っている。
振り返れば、私の半生は、やらなくてもいいトラブルばかり、
起こしていた。

 * * *

公園で、揉めたこともあった。
そこは、犬の連れ込みが、禁止されていた。
四ケ所ある、入口の全てに、その旨を書いた、立て看板がある。
にも拘らず、犬を連れ込む者が居る。
平然と闊歩し、時にベンチで休んでいたりする。

「決まりなんですから、守って下さい」
たまりかねて、注意に及んだことがあった。
私の損益には、まったく関係ない。
しかしながら、決まりは決まりだ。
字の読める、大の大人が、子供達の前で、平然と規則破りをやって、
いいものか。
これを、義侠心と言ったら、笑われるであろう。

「犬より、もっと悪い人間が居るよ」
その男は、抗弁した。
より悪質な例を挙げ、自らの非行を軽く見せる。
その一つの例である。
「そういう問題じゃないでしょ」
私が反論すると、男は捨て台詞を残して、去って行った。
「あんたに、言われたくないね」
じゃあ、誰なら聞くのかと、言いたくなったが、そこで終りにした。

 * * *

これらから、見えて来るものがある。
規則を犯す者、無視する者、彼らは、注意されても、反省など、
決してしないということだ。
むしろ、逆恨みをする。
負けまいとして、居丈高になる。
言われて謝るくらいの者は、最初から、やらない。

注意も、ほどほどにしないと、こちらが危ない。
無頼の者を、相手にしてはいけない。
ということを、近年やっと悟った。
悟ったつもりだ。
しかし、人一倍、血の気の多い、私のこと、いつまた、
注意病が発症しないとも限らない。

私は単に、運が良かっただけかもしれない。
まかり間違えば、高速道路において、追突死させられていたのは、
この私だったかも知れない。
よく無事に、ここまで生きて来られたものだ。



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命あっての……

パトラッシュさん

貴裕さん、
痛ましい事件でした。
犯人への憤りから、つい、今回のようなブログを書いてしまいました。

正義感を発揮するのも、考え物ですね。
命がいくつあっても、足らないですから。
妻の諫言にも、耳を傾けねばならないと思っております。

2017/10/30 07:15:13

生活規則を守れない輩

さん

こんばんは。

いつも拍手頂きありがとうございます。

社会生活の中で決まり事を守れない上に注意されたことに逆上、命をも脅かしかねない。

どうなんですかね?
成長過程で愛情をもらうこと無く弾かれ心に不満を抱えて生きてるのでしょうか。
誰でもよかった 感に障る 自制が出来ない。

犠牲になった方が浮かばれないです。

正義感を発揮できるその勇気が羨ましい気持ちです。

でも奥様の言い分も理解できます。

2017/10/29 20:30:17

性分で……

パトラッシュさん

秋桜さん、
そうなのです。
世の中には「狂犬」が居ますからね。
用心しなければいけません。

しかし、時に、見て居られなくなるのです、私は。
どうにも、困った性分であります。

2017/10/28 17:26:52

親の顔

パトラッシュさん

漫歩さん、
親が劣化している。
その通りです。
その子供が、まともに育つはずは、ありません。
教育を学校にだけ任せていては、いけません。

あの犯人の場合、正しく
「親の顔を見てみたい」です。

2017/10/28 17:23:22

変な人間が増えてきました。

秋桜さん

パトさんの憤慨、怒り、もっともです。
最近、変な輩が増えて来ましたね。
怖いです。

パトさんの行動力頭が差下がります。
でも気を下さいね。
狂犬に噛まれないように。

2017/10/28 14:53:52

子供を叱らない社会

漫歩さん

動物的闘争本能を残したまま、思い遣りや
自制する心のない若者(少年を含めて)が増えているのは、殆どが親の劣化が要因だと
思います。

残念ながら、今後もこのような家庭の幼児は拡大再生産されるような気がします。

そして、そうした両親を持った幼児が送り込まれる幼稚園や小学校には、躾の無い子
を矯正する内容も能力もありません。

戦前の道徳教育を復活させろとは言いませんが、せめて初等教育で、社会に適応する
公序良俗を身に着けた大人になるための教育に取り組んで欲しいと思います。


パトラッシュさんの、巧妙洒脱な文章について書かせて貰おうと思いながら。力みかえったコメントになりました。
申し訳ありません。

2017/10/28 11:36:22

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