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パトラッシュが駆ける!

病名 

2018年01月20日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

暮も押し詰まって、医者へ行く羽目に陥った。
情けない。
普段頑健なくせに、よりによって、年末年始に……
と思えば、余計に口惜しい。

「夜中に咳が出ます。昼間は、さほどのことがありません」
医者に向かい、二年前と、同じことを言った。
いや、もしかすると、三年ぶりかもしれない。
私は、医者嫌いであり、滅多にその門をくぐらない。
だから、受診の記憶も、薄れてしまっている。

医者は黙って、机の上の、カルテを眺めている。
そこには、私のかつての、病歴が書いてあるはずだ。
「気管支炎です」
と、私は、とっくにわかっているのだが、それを言うわけにはいかない。
医者にだって、と言うより、医者だからこそ、プライドというものがある。

診断は、医師が下すもので、患者の自己判断を、追認したくない。
とは言わないが、心できっと、思っているはずだ。
素人に、何がわかる……
えらそうな口を利くんじゃないよ……
くらいに、その道のプロは、思っているのではあるまいか。

例えば、家電の修理業者に、この情況を、当てはめてみればわかる。
「テレビが映りません」と、症状を告げるだけなら、彼は素直に頷く。
「電源回路のコンデンサーが、パンクしているようです」
てなことを、言われて見給え。
プロの沽券にかけて「そうです。よくお分かりでしたね」
とは、言い難い。

そんなに自信があるなら、自分で交換すりゃ、いいじゃないか……
心の中で、客をののしりつつ、しかつめらしい顔をして、
テレビの基盤を眺める。
テスターを取り出し、部品の幾つかを点検する。
やがて、まったく別の部品を指差し「これが不良のようです」と言う。
そこにおいて、彼ははっきりと、プロの権威を、誇示することが出来る。

「取り替えておきましょう」
厳かに言う。
その時の、彼の満足感たるやない。
プロには、プロたる喜びを、抱かせてやった方がいい。
医者に向かい、自己判断の病名を言ってはならない。
わかっていても、素知らぬ顔で、患者らしく、うな垂れているのがいい。

「気管支炎ですね。痰の切れる、お薬を出しておきましょう」
それ見ろ、二年前と同じことになる。
診察は、儀式みたいなものだ。
胸と背中に、聴診器を当て、その間僅かに三分。
いとも簡単に、一件落着となる。

それなら、重症化する前に、とっとと医者に行けばいい。
という理屈が成り立つ。
しかし、私には、出来ないのだな、それが。
咳くらい、自分で治せるという自信がある。
医者に行くのは、最後の最後だ。
というポリシーでもって、私は長く、人生を生きて来た。
この習性を、おいそれと、変えられるものではない。

 * * *

呼吸器が弱くなっている。
数年に一度、医者に行く羽目になる。
これが、私の、人生後半における、想定外の一つであった。

高校生の頃、肺活量の測定をやると、何時も、
クラスでトップクラスであった。
だから、肺には自信を持っていた。
半面で、胃腸に少々、難があった。
下痢しやすかった。
これ、食生活において、乱脈であったこととも関係している。
大喰らいであった。
時に、鯨飲馬食をやった。

ある時、店番をしていたところへ、占い師を自称する男が入って来た。
「運命鑑定を行っております」
ということは、客を求め“飛び込み営業”を行っているらしい。
自宅で、客を待っているだけでは、商売にならないと、みたのであろう。

その男が、私の顔を見るなり言った。
「おたくさんも、胃腸がよくないようですね」
この「も」が、クセモノだ。
胃腸のよくない者は、この世にごまんと居る。
仮に、十人を相手に、この、下手な鉄砲を撃ったとして、
三人くらいには、当たるのではなかろうか。
打率、三割。
野球なら、一流選手の証しだ。
こんなオイシイ商法はない。

私は、この無差別銃撃に対し、にわかに、腹が立った。
勝手に人を、胃腸虚弱者にしやがって……
次の瞬間に、啖呵を切っていた。
「冗談じゃねえ。俺の胃腸は、毛が生えているくらいに、丈夫だぜ」
飲食なら、滅多に人に負けない自信がある。
その自信が、私に啖呵を切らせていた。

男は、目を白黒させ、去って行った。
少し、厳し過ぎたかもしれない。
しかし彼が、私の啖呵により、自信を失う……なんてことは、
ないだろう。
「いけねっ、七割の方に、当っちまったぜ」
舌打ちしながら、次の目標に向かい、邁進したのではあるまいか。

あれは、多分に虚勢であった。
偏見もあった。
医者も占い師も、人を病人にしたくて仕方ない。
その彼らに向かい、安易に救済を求めてはいけない。
という頭が、私の中にあった。
いや、今だって、あり続けている。

 * * *

私は、消化器系の病気で死ぬのではないか……
ということを、若い頃から、思っていた。
乱脈な食生活を思えば、それは当然の応報であり、私には、
それがふさわしいように思われた。

それが昨今は、呼吸器の方へと、懸念が移行している。
こう頻繁に、気管支炎を発症するようでは、私の肺も、
かなり劣化している。
自慢の肺活量だって、かなり衰えているのでは、あるまいか。
もしかしたら、呼吸器の病気で、死ぬのであろうか……
ということを、昨今、頻りに思っている。

その後、占い師は来ない。
来なくて幸いだ。
突然入って来た男から
「おたくさんも、喉から肺にかけてが、よくないようですね」
なんてことを言われると、今の私には、返す言葉がない。



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うれしいな……

パトラッシュさん

彩々さん、
その後、いかがなさっているかと、気にかけておりました。
無事に着地して、何よりです。
淡路島便りを、是非とも、発信して下さい。

咳は治まりました。
しかし、鼻水が出ます。
日中、囲碁サロンにおいて、ティッシュの山を築いております。
散歩のときの、マスクは欠かせません。
若い時は、こんなことなかったのに……と、体力の衰えを、嘆くこと頻りです。

彩々さんが、遠くに行ってしまい寂しくてしかたありません。
こちらに戻った時は、また一杯やりましょう。
スーパーニッカ、用意しておきます。

変な占い師に対しては
「あんたの世話になんぞ、ならねえ。
俺には、まともな占い師が、付いているんだ」と、こう啖呵を切ってやればよかったです。(笑)

2018/01/30 09:22:30

ご無沙汰してしまいました

彩々さん

毎週、拝読していたパトさんBlogも、
自由気ままに足が向くまま、気が向いた
地点に着地して…拝見する時間がありません
でした。

パトさんが昨年暮れから病院に行かれるほど
調子を崩しておられるとは。
咳は長引きますが、何とか体調は戻られ
ましたか!?

今冬のこの寒さ、気管支を冷やすと咳に
つながります。
のど元を温めて、マスクで冷気を吸い込ま
ないようなさってください。

マスクは、変な占い師に対する撃退法にも
なりますよ(笑)

私!?
うん、元気に寒さと地域差と闘っている
所です。

2018/01/30 07:16:56

仰せの通り

パトラッシュさん

かをるさん、
経年劣化というやつでしょうね。
情けないけれど、仕方ありません。
この医者嫌いが、その軍門に下ることが、多くなっております。

2018/01/26 06:11:48

何事も正常な老化

かをるさん

・・・とワタシは思っているのです。

長年使った身体もだんだんとくたびれて来ました。

ワタシもパトラッシュさんと同じように身体には保証のない自信があったのですが

最近は、やせ我慢を捨てて、医者にも早めに行くことにしました。

安心を買うみたいなものですけどね。

寒さ厳しい折、お身体お大事にしてくださいね。

2018/01/25 22:59:31

結果が全て

パトラッシュさん

漫歩さん、
無事に傘寿を迎えられた方の、処世術には、重みがあります。
理屈ばかりこねて、早死にしてしまったら、笑われるだけです。
一種の開き直り、これが奏功しているように思われます。
良い医者と縁があったのも、幸いだったのでしょうね。

2018/01/21 20:07:39

まな板の鯉

漫歩さん

出来るだけ医者を避けたいのはパトさんと同じですが、止む無く医者と向き合ってからはパトさんと真反対になります。
まな板の鯉です。
物分かりの良い患者です。
模範的な患者です。

これが効いたのかどうか〜。2年前に傘寿の道を通り過ぎました。

延命治療無用。臓器提供。のカードを財布に入れてあります。

2018/01/21 10:58:31

似てますね

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
消化器が丈夫でよかったです。
食べる、飲む楽しみは、人生でも格別のものですから。
高齢となり、呼吸器が衰えるのは、経年劣化ということもあり、仕方ないことだと思っております。
無理せず使うより、ないですね。

誤嚥性肺炎、これは、要注意です。
(高齢者の、死因の上位に入るようです)
特に、私のような慌て者は、気を付けねばと、思っております。

2018/01/21 07:35:35

傾向が似ている気がします

シシーマニアさん

私は、今まで占いの方に見て貰った事がないし、彼方から何か言われたこともありません。

知人に、手相が良い、と言われた事がある程度です・・。

ずっと何故か、自分は、最高の運ではないけれど、まぁそこそこ、と根拠もなく信じていたところがあります。

運はきっと、受け取り方でどのようにも解釈できるのだろうと思っています。


只、消化器が丈夫で今日まで来たので、これからは呼吸器系に気遣わねば、と思っています。

誤飲嚥下、といった言葉がやたら目に飛び込んで来る昨今です。

2018/01/20 21:13:43

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