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パトラッシュが駆ける!

お節介病 

2018年04月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私は、自分の性格に、少し問題があると思っている。
「少しじゃないでしょ」
身辺に居住する人から、すぐにツッコミが入る。

「少し」は「いさかか」であり、自覚の程を表している。
皆さんからの、私を見る目と、そこに差が生じるのは、
仕方がない。
衆目の見るところ、変人なのであろう、私は。
世間の皆さんなら、気にされないであろう、
些細なことが、私の場合は、癇に障って仕方ない。

求められないのに、人の世話を焼く。
あれこれと、口出しをする。
こんなことは良くない、止めようと、自分で思っている。
思っていながら、何かの時に、ひょいと出てしまう。
これはもう、既にして、病気であるのかもしれない。

例えば、こういうことがある。
浅草の町を、歩いている時であった。
傘の専門店があった。
店頭に、張り紙があり、こんなことが書いてあった。
「傘の修理 承けたまわります」
これ、おかしいではないか。
屋上屋を重ねている感がある。

他のことには、まだ、我慢が出来る。
国語の乱れに対し、黙っていられない。
会話の中で「全然いいよ」なんてことを言われると、
思わず顔が歪んでしまう。
きっと「苦虫を噛み潰した顔」になっているだろう。

ら抜き言葉が嫌い。
「やばい」も嫌い。
「ちょーオイシイ」にも、舌打ちしたくなる。
「どん引き」……こっちが引きたくなる。
私は、日本語に関して、超保守派と言っていいだろう。

私は、つかつかと傘屋に入り、出迎えた女性に、
紙片を差し出した。
「承ります」
これで良いじゃないですかと、見せた。
年配の女性が、その紙片を持って、奥に消えた。
しばらくして戻り、当店は、承知の上で、
あのように書いておりますと言った。
「承け」は「受け」と同じであり
「給わる」を付け、より丁寧にしている。
という理屈であるらしい。

「この方が、短くて、簡潔ではないですか」
私はなおも、メモを指差し、食い下がった。
そうしたら、言うことがいい。
「当店は、傘屋でもあり、長い方が似つかわしいのです」
こりゃ、だめだ。
私は、すごすごと、その店を後にした。

 * * *

SNSにおいて、投稿された、他人の短歌を見ていた。

「他人妻と なる日まじかの 君なれど ……」
(下句省略)(他人妻は、ひとづまと読むのであろう)

何だこれは……
シニアの集まるサイトにおいて、
仮名遣いも、正しく出来ない者が居る。
情けない。
私は、こういう誤記を見ていると、胸くそが悪くなる。

「本日のギャラリーにて、あなたの短歌を拝見しました。 
↑ の『まじか』は『間近』と思われます。
仮名で書く場合は、元の漢字の読みを取り入れ
『まぢか』と表記します。
気になりましたので、メール致しました。
ご不審の場合は、辞書にてお確かめ下さい」

指が勝手に、キーボードを叩き、気が付いたら、
メールの送信ボタンを、押してしまっていた。
後日、返信が来た。
「ありがとうございました」
一行書かれてあった。
たったの一行であった。
ここに彼の、無念さが垣間見える。

彼は、それから間もなく、そのSNSを去って行った。
ギャラリーに、しばし、その名を見かけないので、
気になって、検索したら、こんな表示が出た。
「こちらのメンバーは、既に退会したか、
存在しないメンバーです」
多分、嫌気が差したのであろう。
その嫌気は、私が発生せしめたと思われる。

短詩形が、要注意だ。
短歌、俳句などの場合、字数が少ないこともあり、
例えば、助詞一つの誤用が、命取りになったりする。
一字たりとも、ゆるがせにしてはいけない。
という頭が、私にある。

私は若い頃、短歌の同人誌に加わっていた。
そこで歌作しつつ、仲間からの、容赦のない批評を浴びていた。
あそこに遠因がある。
あの時の経験を、つい他人に向け、
振り向けてしまうところがある。
ここを直せば、ぐんと良くなるのに……
という苛立ちが、私をして、つい、赤の他人への、
お節介へと駆り立てる。

ここは、同人誌でも結社でもない。
素人が、戯れに、自作を発表する場だ。
と分かっていて、つい、口を出さずに居られなくなる。

俳句の場合にもあった。
助詞についての、文法上の間違いを指摘した。
私より、年長者であったが、彼のその気概は、
老いてなお盛んであった。

「文法もへちまもありません。詩情は感覚なのです。
上げ足取りはご容赦ください」
私のお節介は、とうとう、へちまと同列に、
なり下がってしまった。
そして、不思議なことに、この人もほどなく、
SNSから去って行った。
人に誤りを指摘される。
それは、居たたまれなくなるほどに、
堪えるものなのかもしれない。

私のお節介病は、心ならずも、
SNSの追い出し役のようなことになっている。

 * * *

目をつぶろう。
些細な誤りを取り上げ、波風を立たせることもない。
と、自らを戒めている。

つい最近も、こんなことがあった。
「酒は憂いの玉箒」と書くべきところ
「酒は憂いの玉はたき」と書いてあった。
箒(ははき)つまり「ほうき」を
「はたき」と読み間違えたのでは、なかろうか。
箒もはたきも、昔の清掃具であり、今はもう、
滅多に見かけない。
「はたきをかける」
これなど、もう、死語に近いのかもしれない。
私は、口出しするのを、止めることにした。

また、こんなこともあった。
「会場は、温かい空気に包まれました」
この場合の「温かい」は、そこに居る人々の、
心の在り様を語っているのであろう。
急に、エアコンが効き始めた……ということでは、
ないであろう。
こんな表現はだめだ。
具体的な描写でもって、
その心のぬくもりを表さねばだめだ。
私は、よほど、言ってやろうかと思った。

しかし、思い留まった。
何も、波風を立てることは、ないじゃないか。
また、退会者を出して、いいのかお前……
という考えがあった。

私の病気も、いくらか収まって来たのかもしれない。
しかし、油断はならない。
私と言う人間の、本性が変ったわけではない。
何かのきっかけで、病がぶり返すのではないか……
それを、ひそかに恐れている。

 * * *

浅草の傘店には、後日談がある。
半年後のことである。
通りかかったら、店頭の貼り紙が
「承ります」に変っていた。
さては、私の提言を、受け入れたか……
店に入り、賛意を示そうかと思った。
しかし、止めた。
依怙地な店主め、きっとまた、素直には、聞かぬであろう。
「最近、折り畳み傘の修理が、増えております。
それで短くしました」
くらいに、言うのではあるまいか。



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おや……

パトラッシュさん

澪つくしさんもですか……
今度お会いしたら、お節介比べをやりましょう。(笑)

2018/04/28 16:17:12

楽しみに

パトラッシュさん

山すみれさん、
御作品は、いずれも、一定の水準を越え、安心して拝見しております。
私ごときが、指摘することなど、まったくありません。
これからも、句作にお励み下さい。

2018/04/28 16:15:45

感覚

パトラッシュさん

タンポポ@さん、
川柳をやるくらいの人は、そうでなければいけません。
言語に無頓着な人は、さながら、味覚音痴のブタのようなもの、
短詩形はもちろん、散文にも向きません。
そして、世の中には、結構居るのです。これが……

2018/04/28 16:13:41

大丈夫です

パトラッシュさん

漫歩さんの俳句は、どれも一定の水準を超えた作ですから、毎度、安心して見て居られます。
よほど、修練を経ておられるのでしょう。

2018/04/28 16:07:47

楽しみにしております

パトラッシュさん

みさきさん、
何も、貴女がどきどきする必要はありません。
作品は、全部拝見しておりますが、これまで、一度も、間違いはありません。
歌作、詩作に、今後ともお励み下さい。

2018/04/28 16:04:31

(^-^)//""パチパチ

澪つくしさん

絵文字もお嫌い?

パトさん 

身に覚えの有る事ばかりで・・・

かく言う私も小さい頃からのお節介でしてネ!

今日の文章は、まるで落語を聞いてるようで、
面白うございましたワ!

落ちがよかったですね〜(*^-^)ニコ

2018/04/28 15:39:03

指摘こそ♪

山すみれさん

有難きかな

です。

どうか宜しくお願い致します。

2018/04/28 11:15:44

同感です

タンポポ@さん

ご無沙汰しています。
私も、ら抜き言葉、全然いいよ、
目線・・・気になって仕方がない方です。
ラジオやテレビから、聞こえて来ると
不愉快になります。

2018/04/28 10:46:42

冷や汗

漫歩さん

私は、写真に独り善がりの句を添えてギャラリーに出していますが、句を推敲せずに即投稿しますから後から修正すること屡々です。
今回のパトさんを読んで思い当たる事数多でした。

ー 何も、波風を立てることは、ないじゃないか。
また、退会者を出して、いいのかお前……

私は退会しませんから、お気付きの際はずばりご指摘を賜りたくお願いします。

2018/04/28 10:33:35

短詩形は…

みさきさん

わぁ、心臓がドキドキして、耳の奥がズキズキ…(笑)

短詩形は、一文字が担うものが大きいですから、
表に出してしまってからも、「違うかな〜」と思う事も、しばしばです。(^^;

言葉は生き物で、変化していくものだ、などと言われますが、その変化についていけないことも多いこの頃です。
時々、NHKのアナウンサーからでさえ、首をかしげたくなるような日本語が飛び出すこともありますね。

とても厳しいお話で緊張いたしましたが、
折り畳み傘の落ちが、あまりにも可笑しくて、
楽しく読み終わらせていただきました。
<(_ _)>

2018/04/28 09:41:03

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