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告白 

2019年01月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

オマーンとの一戦は、息詰まる展開になった。
なって当然、サッカーの国際試合で、
息詰まらないことなんか、滅多にない。
ましてや今回、アジアカップという、タイトルへの途上にある。

試合は、膠着状態が続いていた。
日本が一点をリードしたものの、その後は攻めあぐねている。
オマーンが逆襲に転じ、ペナルティエリアの近くまで、
攻め込んだ。
シュートが放たれ、それが、日本のディフェンスに当たり、
大きくゴールを逸れた。
という風に見えた

ボールが視界から消えるや、間髪を入れずに、
オマーンの選手達が、手を挙げた。
「ペナルティーだろー」
数人が形相を変え、主審のもとへと、詰め寄った。
その目という目が、つり上がっている。
しかしながら、主審は動じない。
俺の目に、狂いはないとばかりに、傲然と顔を上げている。

私達、テレビ観戦者には、ビデオがある。
それを、よくよく見れば、ボールは、
ディフェンス長友の左手に、当っているように見える。
となれば、ハンドの反則である。
相手にペナルティキックが与えられ、
それは、かなりの確率で失点につながる。

そのピンチを、主審のジャッジにより、免れたことになる。
そして、日本チームは、虎の子の一点を、守り切った。
辛勝であった。
幸運というよりない。
海外の試合では、時に審判の、不可解なジャッジに、
悩まされることがある。
特に、中東で行われる試合だ。
地元チームに、有利な判定が横行し、
それを「中東の笛」と称したりする。

今回は、それが逆に出た。
笛に、勝たせてもらった。
たまには、こういうことがあっても、良いのかな……
と思ったりする。

翌日のスポーツ紙を見て、驚いた。
当の長友が、「手に当りました」と言っている。
もう過ぎたことだから……
今さら、判定が覆ることもないから……
という安心感もあり、長友はあっさり、告白したと思われる。
これをどう見るか……
長友の、人の好さと見るか、それとも、潔さと見るか……
それとも、他意があるのか……
私には、わからない。

国民性の違いということも、あるだろう。
あれがもし、中東の選手であったなら……
告白なんか、しなかったのでは、あるまいか。

自ら、ファールを申告する。
それは、他の球技でもなくはない。
例えば、バレーボールである。

敵のスパイクに対し、前衛の選手は、
ネット際に立ちはだかり、ブロックに跳ぶ。
強打したボールは、コート外に飛んだ。
これに対し、ブロックに跳んだ選手が、自らの手を挙げ、
ワンタッチがあったことを認める。
審判が、ジャッジを下す、その前にである。
もしかしたら、自チームのポイントになったかもしれない。
にも拘らず、先んじて、自らの非を認めた。
これは、見ていて、とても気持の良い光景だ。

但し、長友にそれをやれというのは、酷だ。
当人だって、その瞬間の事態を、把握しかねている。
気が付いたら、主審がゴールキックを指示している。
その判定を、今から覆すべく申告するなど、
神でもない身に、出来ることではない。
そしてまた、点の重みということがある。
バレーボールとサッカーでは、その一点の重みというものが、
天と地ほどに、違うのである。

 * * *

一度、白を切ったために、後に引けなくなる。
嘘をつき通すより、他に道がなくなる。
「うっかりミスでした」
最初に、謝ってしまえば、小さな問題で済んだ。
意地を張ったがため、かえって大問題になった。

なんてことが、世の中には、しばしばある。
我が身にだって起きる。
そうしては、後悔する。
女房に頭が上がらなくなる。
実にもう、ばかばかしい。

国家間にだって、例がある。
それも、お隣の国との間で起きる。
「ミスにより、レーダー波を当ててしまいました」
最初に、謝ってしまえば、こんなにも、反目し合わなかったであろう。

国民性の違いと言うのは、案外あるかもしれない。
当てたのが、我が国の艦艇であったなら、きっと、
こんな紛糾には、至らなかったであろう。
「まことに遺憾でありました」
これで、幕引きを図ったのではあるまいか。

そうすると、見えてくるものがある。
長友の告白、あれに他意はない。
単に、嘘をつくことを、潔しとしなかったから……
ではあるまいか。
そこには「審判に申し訳なかった」との思いさえ、
込められているのではなかろうか。



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