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パトラッシュが駆ける!

ブルーシート 

2019年09月21日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

鮮やかな青色が、点々と見える。
集落の風景には、そぐわない色だから、すぐにそれが人工物だとわかる。
家々の半数ほどが、その、似合わぬ青に覆われている。

私はテレビにて、千葉県鋸南町の、空からの映像を見ている。
台風により、屋根を壊されたのであろう、応急処置として、
ブルーシートを建物上部に、張ったと思われる。

瓦が飛んだ、ということは、いかに風の力が凄まじかったか、
ということであろう。
予期せぬ厄災であり、住民はさぞ、困惑しているに違いない。
何か力になれることはないか……
とは思いつつも、体力も膂力もないこの身では、どうにもならない。
屋根に上がるさえ、覚束ない。
上がったとて、足がもつれ、転落するのが関の山であろう。

ボランティアなんてものは、若い時にやっておくものだ。
今となっては、どうにもならない。
スーパーボランティアの尾畠春夫さん、あの人は別だ。
格別の人だ。
とてもじゃないが、あの真似は出来ない。

この私に、出来ることがないか……
ない。
「金で解決」
それでは、情けないと思いつつ、結局は、義捐金を送るくらいしか能がない。

 * * *

若い頃の私は、自力で何でも補修をした。
水道の蛇口の増設、電気の屋内配線、テレビアンテナの樹立、
ペンキ塗り、壁紙の張り替え、ビニールトタンの張り替え、
ブロック積み、カーポートの敷設など、ありとあらゆることをやった。
金物店を経営していたせいもある。
それぞれの分野の職人と、接する機会が多かった。
彼らの仕事を垣間見ての、つまり「見よう見まね」ということになる。
それと共に、材料や工具は、手元にいくらでもあった。
あれが足らない、となればすぐに店に戻って調達出来る。
それは大いなるアドバンテージであった。

自宅の二階屋根にも、気軽に上がった。
当時は、店舗兼用の木造住宅であり、雨漏りがすることがあった。
道路が鋭角に交わる、その角地に、形を合わせ建てた家だから、
屋根に無理がある。
山あり谷ありで、水の流れが複雑になる。
それが雨漏りの原因となった。

コーキング材を持ち、屋根に上がり、
発生源と思われる隙間を探し、充填した。
直った、収まった、と安堵したのもつかの間、月日が経てば、
また漏り始める。
その度に屋根に上がり塞ぐ。
そのいたちごっこであった。

高所に上がるのが、苦にならなかった。
ベランダにハシゴを立てかけ、作業道具を腰に、
ひょいひょいと上っていた。
あの頃の私だったら、被災地に駆け付けられたかもしれない。
ブルーシートは、店に大量の在庫があった。
車に積み、一路南房総を目指していたかもしれない。

今はだめだ。
家は、三階建てのコンクリート造りに、建て替えてしまった。
雨漏りもしない代わりに、私が屋根に上がることもなくなった。
十数年のブランクは大きい。
私が今、屋根に上がったら、途端に足をふらつかせることだろう。
それを見上げる妻が、ぎゃっと叫ぶに違いない。

 * * *

ブルーシートほど、安価で便利な建築資材はない。
水を透さず、日射しを遮り、しかも引っ張りに強く、
容易に破断しない。
これの恩恵を、大はビルから、小は住宅まで、建築現場は、
どれだけ受けていることだろう。

いや、もっと小規模な建造物もあった。
河川敷に立つ、廃材を利用した、小屋がそれだ。
よく見てみ給え、あれもまた、鮮やかな青に彩られている。

さらにある。
ブルーシートには、人の目を遮る働きがある。
そこには人権が絡んでいる。
悪事を働いた者とて、プライバシーは守られねばならない。
そこで警察は、実況検分をやる際に、これを張り、
マスコミや世間の目から、被疑者を守ってやっている。
生き恥をさらさずに済んだ……
彼はその配慮に対し、感謝しているに違いない。

かつて「人の目に戸は立てられぬ」と言った。
その通り、戸板を並べ立てるのは、人手と労力の関係で無理だ。
今は、わずか数人でブルーシートを立て、遮蔽してしまう。
良い時代になったと言うべきかもしれない。

 * * *

犯人でもない、路上生活者でもない、
あなただってブルーシートの恩恵を受ける。
それは花見の季節である。
花の下にて酒宴を開く、その際に、これほど役に立つ敷物があるであろうか。
衣類の汚れを防ぐばかりでない。
これを敷いた一角は、我がグループのもの。
かりそめながら、居住権すら主張出来るのである。
上野公園を見よ。
花の盛りには、全山これが敷き詰められ、居住権同士が踵を接している。

これほどの恩恵を受けながら、しかし、人間は感謝が足らない。
酒宴が終るや、これを捨て去る者がいる。
嵩張るからだ。
使用前には、必需品であったものが、使用後には邪魔物と化す。
よくあることだ。

昨今「雇い止め」が、問題になっている。
派遣社員を便利に使っておいて、用が済むと
「もう来なくていいよ」とやる。
捨てられたブルーシートの山を見つつ、
この国の労働問題にまで思いを馳せるのは、多分私くらいであろう。
皆さん、酔っ払っていて、それどころではない。

私もかつて、満開の桜の花の下で、ブルーシートを広げたことがある。
酒宴を兼ねた碁会、つまり花見囲碁大会であった。
近くの善福寺公園でやった。
あそこは上野公園ほどの混雑がない。
居住権も気兼ねなく設定出来た。

広げたブルーシートの上に、板製の碁盤を数面並べ、
会員が相互に碁を打つ。
昼時には、それを中断し、皆で酒宴を催す。
差しつ差されつする、その盃に、花びらが舞い降りる。
それはもう陶然として、夢を見るような一刻であった。

その仲間も、一人死に、二人病みして、今は行われていない。
若い女性も来ていたけれど、彼女だって結婚し、
子供が出来ているだろう。
今は囲碁どころでは、ないと思われる。

でも何時の日か、再び機が熟し、花見碁会をやることが、
あるかもしれない。
そしてまた、何かの天変地異に際し、利用することがあるかもしれない。
それで私は、かつて花見に利用したブルーシートを、今も取ってある。
倉庫にしまってある。
買えば千円そこそこの、それをである。

かつて私の店では、十枚ほどのブルーシートを、常に在庫に持っていた。
今は、そう言う訳で、中古の一枚である。
私は、この面からも、千葉県に駆け付けることは、出来ないでいる。



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もっと屋外で……

パトラッシュさん

みさきさん、
アメリカにもブルーシートはあるのでしょうか?

花見碁会を思いついたのは、私です。
我ながら、名案でした。
お茶に野点があるように、囲碁にも屋外戦があってもいいかな……
タイトル戦など出来ないかな……と考えております。

2019/09/22 09:16:23

同感です

パトラッシュさん

oomotoさん、
人の不幸に漬け込む悪質業者、許せません。
実名を公表出来ないものかと、思います。

災害の規模が、大きくなっているようです。
人類の傲りに対する、天の怒りのような気が、しないでもありません。

2019/09/22 09:10:10

返句です

パトラッシュさん

タンポポ@さん、

やりたいと 思えど叶わぬ ボランティア
ボランティア したい時には 力なし

お粗末。

2019/09/22 09:04:27

出番

みさきさん

被災地の皆様、お気の毒です。
我が家も、大雨で盛大に雨漏りした事や、強風で瓦が飛んだ事などがあって、ブルーシートのお世話になりました。

便利なブルーシート、備えておきたい気もします。出番がないことを願いながら。

桜の下の囲碁大会、そんな素敵な事に使われたら、ブルーシートもさぞかし喜んだことでしょう。そんな出番だったら、いくらあっても良いですね。

2019/09/21 14:31:13

悪徳業者

さん

千葉県での台風による甚大な被害でブルーシートを利用した悪徳業者が膨大な代金請求と報道され 大憤慨しています。
我々にはわずかな義援金で1日も早く復興される事を祈ることくらいしか出来ません。
それにしても近年災害列島日本と思えてなりません

2019/09/21 14:30:54

ブルーシート

タンポポ@さん

こんにちは。大きな災害があっても
ボランティアは、とても出来ません。
出来るのはほんの気持ちの義捐金です。
ブルーシートは色々便利ですね。

川べりのブルーシートのホームレス  タンポポ


お粗末でした<(_ _)>

2019/09/21 14:09:42

もどかしい

パトラッシュさん

漫歩さん、
安くて丈夫、これほどの優れものは、滅多にないでしょう。
問題は、それを屋根に張ることです。
屋根に上がることです。
それが出来ないで、苦労している被災者の、いかに多いことでしょう。

2019/09/21 12:59:38

再認識

漫歩さん

「うん、うん」「そうだなぁ」ブルーシートの役割を改めて納得しながら読ませて頂きました。

たかがブルーシートされどブルーシート!

2019/09/21 10:35:13

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