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パトラッシュが駆ける!

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2019年10月19日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

幼児向けの、囲碁入門書が発刊された。
その名も「いごってなあに?」
絵本である。
かつて女流名人であった、小林泉美さんが考案され、
漫画家の荻並トシコさんが、描画を担当された。
つまり合著ということになる。

発刊されることは、かねがね聞いていた。
実を言えば、私はお二方とは、何となく親しい。
親交ではない。
道で会えば、立ち話をするくらいの仲である。
私はこれでも、囲碁サロンの主であって、ひょんなことから、
囲碁のプロと知り合うことも、ないわけではない。

発刊されたことが、新聞に載った。
この辺はさすがだ。
泉美さんは、元が付くにせよ、かつての女流の第一人者である。
そして今は、張栩前名人の奥さんでもある。
有名人は得だ。
無名人の場合は、逆立ちしたって、その出版を、
大新聞が取り上げてくれることはない。
私もかつて、雑文集を自費出版した経験がある。

しかし、羨んで居ても始まらない。
お二人のために、微力ながら一肌脱ぎたい。
と思っても、私のやることは限られている。
サロンのガラス戸に、宣伝のポスターを張って上げることにした。

さすがに絵本だ。
幼児の興味を引くために、その本の中では、
碁石を猫に置き換えてある。
白と黒の猫が戦う。
黒猫が白猫グループに囲まれ、捕虜となる様を描いている。
白猫同士が、手を繋ぐことにより、
黒猫の包囲網を脱する光景も描かれている。
囲碁への興味を抱かせる、という意味で、成功していると思われる。

ずぶの素人に、碁を教える。
これが実は難しい。
囲碁は、戦いの他に、所有地の確保も大事なゲームであり、
言ってみれば、猟師と農民を兼ねるようなものだ。
五目並べやオセロより、格段に奥が深い。
戦いと、領地の確保、その二つの目的を、
どうビギナーに理解させるか……
囲碁の指導者は、そこに腐心している。
言葉を尽くし、説明をする。
それよりも、図解なら一目瞭然だ。
百の雄弁も、一枚の絵に敵わない。
と言うところを、この絵本を見ながら、改めて思っている。

 * * *

T小囲碁将棋部の、夏休み前の出来事であった。
「先生、生徒達に、激励の言葉を書いて頂けないでしょうか」
クラブの世話人さんから言われた。
生徒達には、夏休み中も、囲碁にいそしんでもらいたい。
それをカードに書き、生徒それぞれに渡そうという趣向だ。

「がんばろう」「じっくり手を読もう」「石の繋がりを大切に」
など、激励や教訓を書こうかと考えた。
あるいは「取ろう取ろうは取られに元」
「左右同形中央に手あり」などの、
囲碁の格言を書くことも考えらえる。
しかし、いかにもありきたりだ。

私は、五七五の句の中に、生徒の名を読み込むことを考えた。
「降る雪や 春の訪れ 早よ見たい」 
(春=初段のことです)
「山ありて 川あり野末に 春霞む」 
(夏もがんばりましょう)
「石を活かし 異なる手筋も 試みよう」 
(いろいろな手を試してみましょう)
「碁を打とう 石積む技術 高めつつ」 
(石と石はつながって強くなります。人も同じです)
俳句でもない、川柳でもない、ただの戯れ句である。
しかしながら、五七五の中に、それぞれ生徒の名を詠み込んである。
これが自慢だ。
苦吟の末に、一晩かかって詠み上げた。
そして、それを、一学期最後のクラブ活動において、
生徒一人一人に渡した。

「先生、すごーい」
なんて賛辞を、実は期待していた。
「よく作れるもんですね」
お母さん方から、言われるかな……とも思っていた。
しかし、ウンでもスンでもない。
誰も何も言わない。
あの苦吟は、何のためだったのだろう……
私の悪いところだ。
すぐに成果を期待する。
そうしては、無力感に襲われているのだから、世話はない。
私の人生は、こんなことの繰り返しであった。

 * * *

絵の力は大きい。
五七五の中に、自分の名があったって、生徒は喜ばない。
これが似顔絵であったら、どうであろう。
それを漫画家に描いてもらう。
荻並トシコさんは、目でも眉でも、
特徴を掴むのことの上手い人である。

カードなどという、ケチなものではなく、
いっそ色紙に描いたらどうであろう。
壁に掲げ、皆さんに眺めてもらえるではないか。
そうなったら、私だって黙っていない。
「ついでに、この私も描いて下さい」
申し出るつもりだ。
仮にも先生である。
そのくらいの役得を主張しても、バチは当たるまい。
荻並トシコさん、実は、生徒の保護者の一人である。
部の活動に、格別の尽力を賜っている。

もっと早くに、トシコさんと知り合っていれば……
ということを思っている。
私は三年前に、書きためた紀行文などを、一冊にまとめ出版した。
もちろん自費である。
その時に、装幀で苦労した。
気楽な雑文集なので、表紙には、くだけた絵がほしかった。
出版社の紹介により、見ず知らずのイラストレーターに、
作画を依頼した。
男が三人、雁首を並べ、露天風呂に漬かる図である。
悪くはない。
しかし、今一つ物足らない。
おお……と唸るようなものがない。
トシコさんなら、私のこの顔をよく知っている。
私を、そして読者をも、唸らせてくれるのではあるまいか。

しかし、出会うのが遅すぎた。
私は三年前、これが最後として、出版を敢行した。
もう道楽は終りにしようと思っている。
しかしながら、ひょんなことから、才ある人と出会ってしまった。
私は、自制心の希薄な男である。
囲碁の絵本を見ながら、自分もまた本を出したくなっている。
「また病気が始まった」
呆れる皆さんの顔が、目に浮かんでいる。



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実践あるのみ

パトラッシュさん

yopikoさん、
図書館にありましたか、それはよかった。
なければ、私の手元に何冊かありますので、差し上げるところでした。

実のところ、この一冊だけでは、囲碁への入門は難しいと思います。
実際にやってみることが一番です。
一日体験教室、是非行ってみて下さい。
そして、もし「その気」が高まりましたら、私のサロンまで、どうぞお越しください。

2019/10/24 08:43:41

いごってなあに?

yopikoさん

図書館の新刊本のコーナーで見つけて直ぐに借りました。
孫のためと思いながら私の方が
その可愛いらしい絵本に惹きつけられました。
素敵な絵本でした。

囲碁ってなあに?
と言うわけで
今度の土曜日
囲碁の一日体験教室に
行って参ります。

2019/10/23 20:21:38

囲碁もオセロも

パトラッシュさん

彩々さん、
囲碁の世界は大変に奥深いものです。
その関係の本を書けたらよろしいですね。

オセロもいいですが、囲碁も楽しいですよ。
彩々さん、向いているかも。
一度手ほどきしましょうか?……

2019/10/21 19:24:41

出したくなったら、出す!

彩々さん

本の出版の動機はこれしかないでしょう!

パトさんの頭の中は、多方面に広がる知識

をも蓄えられておられるから、何時・誰と

というのを決められたら、後はスイスイと

希望のご本が仕上がることでしょう。

子供と私のようなシニアの心に響く、

解りやすい囲碁のハウツー本を期待します!

って、相変わらずオセロゲームに嵌っている

彩々ですが。

2019/10/21 09:39:47

早打ちみさきさん

パトラッシュさん

承知しました。
いやあ、素早いです。
短気なことでは、人後に落ちない私ですが、
これは、恐れ入りました。

2019/10/19 14:37:33

ぁ……!

みさきさん

パトラッシュ様
美しい句を有難うございます。
故郷に、母が残してくれた満月を思い出し、とても嬉しいです。
御本は…、ワタクシ、早まってしまいました。(^^;)
実は、すでに、アマゾン、クリックしてしまったのです。
…というわけで、お送りいただくには及びませんが、お気持ちだけ、有難く頂戴いたします。
<(_ _)>

2019/10/19 13:49:44

みさきさん

パトラッシュさん

ありがとうございます。
お礼に一句(お名前を詠み込みました)

みすずかる 信濃の佐久の 望(もち)の月

みさきさん、お買いになる必要はありません。
私の手元にも、何冊かありますから。
(関係者特権というやつで)

お送りします。
しかし、外国に物を送るなんて、やったことがないので、困っております。

2019/10/19 13:17:39

漫歩さん

パトラッシュさん

ありがとうございます。
お礼に一句(お名前を詠み込みました)

吟じつつ 漫(そぞ)ろに歩む 萩の道

2019/10/19 13:10:28

クリスマスプレゼント、決まり!

みさきさん

わぉ、ご本の紹介有難うございます。孫坊へのクリスマスプレゼント、これにします。
(ぁ、孫以前に私が読むべきかも)
先生に名前を詠み込んでいただいた575、大人になってから、思い出して噛みしめるのではないでしょうか。
前回の御出版、大変楽しく拝読いたしました。 次の御出版、楽しみにしております。

2019/10/19 11:00:35

囲碁塾盛衰記

漫歩さん

パトさん、思い初めたときはは絶好の機会です。
是非実現してください。

いままで読ませていただいた囲碁塾ものはど素人の私にも興味ふかいものばかりでした。
集大成はまだ早いので前編ではどうでしょう。
余計なお節介とは知りつつ今日の読後感です。

2019/10/19 10:51:01

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