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パトラッシュが駆ける!

頂きます 

2019年12月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「碁盤があります。碁石もあります。祖父の遺品です。
もしかして、こちらで、使って頂けないでしょうか?」
若い女性が、サロンの戸を開けて言った。
「家族は誰も碁をやりません。
でも、捨ててしまうのは、もったいないので……」
「わかりました。頂戴しましょう」
とは言ったものの、私のサロンの用具は、足りている。
ここは一言、念を押さねばいけない。
「初心者の生徒が何人か居ます。
まだ自分の道具を持っていません。
それらに上げることでも、よろしいでしょうか?」
「はい、もちろんです。ありがとうございます。
近日中にお持ちします」
喜んで帰って行かれた。

後継者が居ない。
という悩みは、世の中ざらにある。
大きな例なら、農業だ。
漁業も同じ。
子や孫が都会に出て、サラリーマンになってしまうと、
地を這うような辛気臭い仕事は、もう御免だとなるのであろう。
先祖伝来の仕事でもこれだ。
道楽を継がない例など、もう、いくらでもある。

漁船なら、売れもしよう。
耕作放棄地の場合、これを借り受けて、
農業規模を拡大しようとする者が出る。
捨てる神あれば、拾う神ありだ。
荒れるに任せるよりは、よほど良い。

道楽の場合、後継者が居なければ、その用具は、無用の長物となる。
故人の遺薫が薄れると共に、むしろ邪魔になる。
それを、ゴミ置き場に置かれる、その寸前に譲り受ける。
私のやっているのは「人助け」ならぬ「道具助け」だ。

実を言えば、私のサロンの用具は「助けた」品ばかりだ。
榧の六寸、桂の五寸、買えば高いであろう、
立派な碁盤が二面ある。
使用者が亡くなり、後継者がなく、持て余した遺族が、
私の元へと運び込んだ。
碁石も然り。
囲碁の参考書も同じ。
自分で購入したのは、テーブルとイスくらい。
私は、助けた廃物により、サロンを運営させてもらっている。

さて、どんな碁盤と碁石が現れるか。
よほどの良品なら、現在あるそれと入れ替えてしまおうか……
なんてことも、考えないではない。
新妻を迎えるために、古女房を離縁する。
などと言う、非情なことではない。
古女房にも、然るべき嫁入り先を用意し、そちらでさらに、
寵愛を受けてほしいとの、大局的見地のつもりでいる。

 * * *

私もかつて、人に物を譲ったことがあった。
今は便利な世の中であり、ネットの掲示板に
「上げます」と出せば、簡単に貰い手が付くことがある。
例えば、使わなくなった、石油ストーブを、
この方法により、人に渡した。
電動工具を上げたこともあった。
孫が成長し、使わなくなった玩具を、まとめて譲ったこともあった。
逆に、見ず知らずの人から、ある作家の全集を頂戴したこともある。
世の中は、持ちつ持たれつだと思っている。

私は、人から物を譲り受けた際には、些少なりとも、
何かの礼をするようにしている。
「上げます」は、つまり対価を求めないことだ。
でも、気は心と言うではないか。
前述の碁盤を譲り受けた際は、ビール券を差し上げた。
全集を頂いた際は、みかんの一袋であった。
不用品を譲り受けた、それだけの縁である。
今はもう、名前すら忘れている。
そのささやかな出会いでも、縁は縁だ。
私はこれを、大事にしようと思っている。

そのために、私はギフト好適品を幾つかストックしてある。
ビール券が数枚ある。
図書券も何枚かある。
今は図書カードと言い、一枚千円となっている。
実はこれらもまた、もらい物であり、こんな時にために、
自分では使わずに溜めてある。
これを点袋(ポチ袋)に入れて渡す。
問題は、何枚入れるかだ。
それは、モノを見てからのことになる。
運び込まれたそれを、一目見て、瞬時に判断する。
「少々お待ちください」と言い、奥に行ってカードを袋に詰める。
「これ気持です」と言って渡す。
「いえ、そんな」と多分固辞されるであろう。
「まあまあ」と言い、敢えて押し付ける。
その一連の動作を、スマートに行わねばならない。

彼女が現れてから、三日が経った。
すぐにも持参したいような口ぶりであったが、
歳末でもあり、何かと忙しいのかもしれない。
一週間が過ぎた。
まだ現れない。
もしかして気が変った……なんてことも、考えられないではない。
自分で使う気になった?
それはそれで結構なことだ。
出来ることなら、その心変わりの経緯を知りたいと思っている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

本年もご愛読を賜り、ありがとうございました。
皆様どうぞ、良いお年をお迎え下さい。



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転んでもただでは起きない

パトラッシュさん

漫歩さん、
空振りに終わろうと、それをネタにする。
それが私の身上だと思っています。

この一年、ご愛読をありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2019/12/28 20:47:54

来年もご健筆を〜

漫歩さん

かの女性が、碁道具(祖父の遺品)をなかなか持ち込んでこない事には意外な事態がが〜。
私はそこに野次馬的興味を持ちました。

空振りに終わったとしても、パトさんのブログの材料になることを期待して〜。


毎土曜日に楽しい読み物を有難うございました。
来年もよろしくお願い致します。
ご夫妻仲睦ましく良い年をお迎えください。

2019/12/28 18:53:41

年の瀬

パトラッシュさん

おかちゃん、
こちらこそ、数々の動物写真を楽しませて頂きました。また、来年も、どうぞよろしくお願いいたします。

2019/12/28 18:30:03

こちらこそ、ありがとうございました

おかちゃんさん

毎回、毎回楽しく拝読させて頂いています。
パトラッシュさんも良いお年をお迎え下さい。

2019/12/28 17:47:58

近くの人に……

パトラッシュさん

藤の花さん、
私の場合は、SNSの地域限定のコミュニティを利用しました。
遠隔地だと運搬の労が付きまといますが、近くだと自転車で取りに来られます。
孫の玩具なども、この手で処分しました。
必要とされる方には、喜ばれます。
ゴミに捨てるのは、最後の手段となさって下さい。

2019/12/28 17:04:04

あげます

藤の花さん

トラック一杯の品が有り処置に悩んでいます。
電子部品、機器、工具、書籍、資料。
あげますと言っても貰い手は付きません。
あげますの掲示板使ったことは有りません。
来年の課題なんですね。

2019/12/28 13:58:00

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