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パトラッシュが駆ける!

万引犯? 私が? 

2020年01月11日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「お客様、恐れ入りますが、こちらへおいで頂けますでしょうか」
若い女性が追いかけて来て言った。
案内係であろう、販売員とは違う、フォーマルな服装をしている。

私がバッグを買い、店を出ようとする、その矢先であった。
そう言えば、先ほどからピピピピピと、妙な音がしていた。
何の音だろう、何処から発しているのだろう……
周囲を見回したが、わからない。
まさか自分のレジ袋から、出ているとは思わなかった。

家電量販店でバッグを買う。
これを筋違いというのかもしれない。
だが、売っているのだから、仕方ない。
見ている内に欲しくなり、つい衝動買いしてしまった。

エスカレーターの前に、ゲートがある。
各階にある。
レジで金を払わずに、ここを通過すると、警報音が鳴るらしい。
ということは、わかっていた。
ゲートには、そのようなことが書かれてある。
しかし、未だかつて、その音を聞いたことがない。
本当に作動するのかね……
ゲートの存在を、すっかり忘れていた。

一階入り口近くにある、カウンターに導かれた。
男の係員が待ち受けていて、慣れた手つきで、
私のレジ袋から商品を取り出した。
長さ六センチほどの、細いプラスチック片がついていて、
これがどうやら防犯タグであるらしい。
それを外し、何かの操作を加えたらしい。
ピピピはすぐに鳴りやんだ。

私はどうやら、万引き犯と間違われているらしい。
鈍感な私も、ようやく事態を飲み込んだ。
しかし、狼狽えることはない。
私は、受け取ったレシートをレジ袋に突っ込んでおいた。
これが無実を、証明してくれる。

「失礼をいたしました」
係員と案内係が、揃って頭を下げた。
私はこの頃になり、にわかに不満が湧いて出た。
ああそうですか、ではさようならと、店を出るわけには行かない。

「私は結局、万引き犯と疑われたわけですよね」
「いえ、そういうわけではありません。
タグを、取り外させて頂いただけです」
「私に何か、落ち度がありましたか?」
「いいえ、レジの係員のミスです」
「不愉快です。その店員のところへ行きましょう」
「いえ、レシートに担当者の名前が書いてあります。
後ほどこの件について、伝えておきます」
「客が怒っていたと、くれぐれもお伝え下さい」
「はい」
「激怒です」
「はい」
「顔を赤くしてたと」
「はい」

私はそれで、ことを収めることにした。
これがタチの悪い客であったら、係員らを恫喝し、
逆ねじを食わせるだろう。
「この落とし前を、どうやって付けてくれるんだー」
大声を出せば、店側だって、困るだろう。
慌てて管理職クラスが出て来て、粗品でも差し出し、
どうかこれにて……と平身低頭するかもしれない。
しかし、私には、そんなヤクザまがいの真似は出来ない。
商人を苛めてはいけない。
と固く思っているのは、私がかつて、商人であったからだ。

威張り散らす客に、随分と苦い思いをさせられた。
一方で、万引きの被害に遭ったこともある。
先刻まで、棚にあった商品が、忽然と消えている。
犯人は、若者が多かったが、年配客とて油断は出来ない。
いい歳をした主婦が、何食わぬ顔でそれをやった。
朴訥そうに見えた職人風も居た。
捕まえて弁済させたのは、一割にも満たない。
悔しいったらなかった。

だから私は、死んでも、万引きなんぞやらない。
それが手違いとは言え、疑われてしまった。
私はこのバッグを見る度に、買った日のことを思い出すだろう。

 * * *

「このバッグ、やろうか」
「どうしたの?」
「買ったんだけど、よく見たら若向きなんだよな、この色」
「ふーん。でも大丈夫」
「ほら、もってけ」
「大丈夫」
「欲のないやつだ」
孫に声をかけたが、にべもない。
中学生であり、彼らは「要らない」「食べない」
「ノーサンキュー」と言う代わりに、大丈夫と言う。
まったくもって、国語力がなっていない。
張り合いもない。

自分で使う心算で買った。
しかし、にわかにその気が薄れている。
「身に付ける品は、ちゃんとした店で買いなさい」
妻が言う。
ちゃんとしない店で買う。
出物を探す。
それが私の趣味なのだから、如何ともし難い。



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悪意がなくても……

パトラッシュさん

yopikoさん、
鳴るものなのですね、ブザーって。
私は初めて体験しました。

ほんとうに、ぼーっとしては居られませんね。気を付けましょう、お互いに……

2020/01/16 07:30:26

そうかなあ……

パトラッシュさん

Babanさん、
私は、ミエミエと感じたことはありません。

2020/01/16 07:25:58

図書館の本

yopikoさん

万引きでは無いのですが
私が図書館から出る時にブザーが鳴り
すぐに職員の方が走って来ました。
とてもビックリしました。
私?と言う顔をしたら
違いますと言うジェスチャーをしながら
私の前を歩く高齢の男性に
声をかけていました。

お客様、本をお持ちでごさいますね。

あっ、忘れていました。すみません。

鳴るものなのですね
あの入り口の機械

チコちゃんに叱られないように
私もボーッとしないようにしなくては
と思いました。

2020/01/15 23:14:40

昨今のスーパーは

さん

「老人をみたら万引き犯と思え」ふうな態度がミエミエですね。

私はなるべく、ネットで買うようにしています。

2020/01/12 18:41:18

タグ

パトラッシュさん

まはろさん、
ありましたね、日本でも。
今回が初体験でしたが。

I`m sorry だけでは、腹の虫が治まりませんね。
お詫びのしるしに、タオルの一本、菓子折りの一つでも、差し出せばよいのですが……

2020/01/12 08:48:06

失礼ですね

まはろさん

パトラッシュさん
まー失礼な 日本でも有るのですか?
我慢したのですか   さすがですね

私の経験はぴいぴい鳴らなく万引きには間違われ無くて良かったのですけれど・・
家で気が付き 又ストアーに行き外してもらいました  そしたら I`m sorry の一言だけ
文句言いたかった  けれどぐーと我慢しました ^_^

2020/01/12 05:36:59

紳士ではありませんが

パトラッシュさん

たんぽぽ@さん、
ここを先途と、店員を脅すのも、大人げないと思いました。
今でも、商人の血が流れているからでしょう。

万引きの光景を見かけた時……
それは対応が難しいですね。
社会正義の上からは、警備員に知らせるべきなのでしょうけれど……
私は幸い、そんな場面に出くわさないので、助かっています。
場所が個人商店だったら、私は断固、注意しますけれど……

2020/01/11 16:38:44

言葉に関しては保守派です

パトラッシュさん

漫歩さん、
国語は絶えず変化しています。
変化させるのが、かっこいいとでも思っている若者が多いのせいでしょう。
逐一注意するのも、草臥れます。
私だけは、それらに釣られず、本来の日本語を貫こうと思っております。

2020/01/11 16:32:37

時効です

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
不愉快ではありましたが、ことを大きくすることは望んでいませんでした。
誰でも、過ちはあるものですから。
それにしても、レシートは大事です。
あれがなかったら、潔白を証明するのに、もう少し時間がかかったでしょう。

イヤリングは、もう時効でよろしいのではないでしょうか……
人格を疑うというような、大きな問題ではないと思いますが……

2020/01/11 16:27:46

あらま!

タンポポ@さん

腹立たしいですね。パトラッシュさん紳士ですね。
タグを取る、そんな大切なことを忘れたレジ係、
怠慢以外の何者でもありません。

私は時々万引きを見かけます。
でもそれを知らせることも中々出来ません。
いざという時には、警備員がいないのですもの。

2020/01/11 12:51:06

若者と賢妻

漫歩さん

「ふーん。でも大丈夫」応えになっていませんね。
(笑)若者は大人たちの既存の話し言葉が回りくどくダサイので、自分たち流の言葉の世界を作っているのでしょう。

「身に付ける品は、ちゃんとした店で買いなさい」
まさに賢妻です。

2020/01/11 12:19:41

疑われる・・。

シシーマニアさん

さぞ、不愉快だったことでしょうね。

でも当然ながら、疑いを晴らす機会があって、何よりでした。

かつて、私はいたずらで交換した友人のイヤリングを、返す事をすっかり忘れてしまったことがあります。
バッグの中から出てきて、ハッとした時は、既に連絡方法もわからない程、かなり時が経ってから、でした。

それはよく見ると、金と珊瑚でできたかなり高価そうなものでした。

未だに、私の人格は疑われているでしょう・・。

2020/01/11 10:35:06

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