まぬけなご主人様

まぬけな誇り高き男達 3話 

2018年04月11日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し


まぬけな誇り高き男達3話

レンジャー隊員になれる権利を持つスタートラインにやっと立てた




私達28人は駐屯地の山手の離れた官舎に


これからの3ヶ月


寝食を共にする事になるのです…


28人全てが全部同じ日用品を所持する


石鹸に石鹸箱

タオルにコップ

桶にシャツにと


置き方も全員が同じ場所の同じ向き同じ角度で統一するのだ…



仲間意識を高める為の手法だった



私物置きの机や小物入れの棚などいつも整理整頓の厳守で


戦闘服は毎日洗濯し


カンターチでアイロン掛けタックのラインもシワ1つ無い位にテカテカにアイロン当てるのです…


今、考えたら、母親や彼女に洗濯、アイロン掛けなどしてもらっていましたから、この自衛官になって初めてした様に思います





ブーツ(半長靴)は靴墨でピカピカに磨いておく!

本当に顔がブーツの爪先部分に写る程磨くんですよ



毎朝、朝礼後服装検査が行われる

全員、整列

バディ毎に整列、私の前に文さんが立つ

助教が文さんの前に立ち

文田、何じゃその髭〜 一本、二本、三本と数を数えだす助教

ま、ま、マズイ〜

髭の剃り残しや!

全部で7本

文田 爪を出せ! 助教の命令に文田さんはハイと指の先を出すと

何やお前爪をキチンと切ってないやないか〜全部ダメ10個

うわぁ〜マジか〜!



その後もチェックは厳しく入り、文田さんの戦闘服にシワが有ればシワの数だけ



腕立て伏せ用意 助教の怒鳴り声がこだまする



勿論私のバディーだから私も



私の顎に剃り残しのヒゲが

ヒゲの数だけ

腕立て伏せ用意



ブーツの汚れ

爪の長さ

ベルトのバックルのくもりなどありとあらゆる落ち度を探された



探すアラが無くなると



まぬズボンを脱げ ハイ


私は素早くベルトを外しズボンをずらすと


お、お、お前なんちゅうパンツ履いとるんじゃ〜赤いハート柄のパンツを指摘されハートの数だけカウントされました。



やり過ぎや〜どんだけ腕立て伏せさせるねん



ほとんどの訓練生は朝から100回200回300回と腕立て伏せ地獄を味わうのです



ベッドメイキングも手で形を作り毛布の角がキチンと角張る様に何時も整える…


少しでも角が丸まっていたら



助教が…腕立て伏せ用意



罰が待っていた




ここは自衛隊だが軍隊

当たり前の事だが自分の事は全て自分でする…

甘えなど許されないのです


余談ですが…

今の甘えてる若い奴らに一年でも二年でも自衛隊に入隊させれば少しはマシな人間になる事だろうと私は考えます…



話しを戻して

レンジャーの訓練は大きく分けて2つ

前半は体力強化訓練

後半は想定訓練となる…



体力強化訓練は精神的、技術的、肉体的に隊員を強化する


そして想定訓練は当時は仮想敵国はソ連だったので、ソ連が攻めてきたと想定し演習訓練をする事だった…



1日→朝起きて寝るまで全て訓練だった



就寝前に戦闘服をハンガリーに掛けて取りやすい様にし


ブーツの紐も予め途中まで結んでおいて直ぐ履ける様開いておいた

なぜ?

それは起床ラッパが鳴って五分以内に戦闘服ブーツの戦闘状態で中庭に整列し点呼をとらなければならない為なのだ…



ラッパが鳴る→ベッドから飛び起きる→戦闘服を着る→ブーツを履く→中庭にダッシュ



五分以内

五分を超えてしまうと罰が…

腕足せ伏せ用意



助教の怒鳴り声が…



勿論バディーは2人で1つなので相棒が時間に間に合わなかったらバディーの片方も罰で腕立て伏せをするのです…


バタバタした朝もレンジャーに成る為皆必死にやりました!



夜は沢山のロープの結び方を教わり練習

ロープとロープを結ぶ帷子の金具を磨いたり

全員で山の歌やレンジャーの歌を唄うのです…



ここでレンジャーの歌を1つご紹介致します





レンジャー隊長は傷ついた〜


傷つき喘ぎながら〜


部下のレンジャー隊員達に生絶え絶えに言付けた〜


私が死んだその時は〜


骨を5つに切って〜



1つ目は我が祖国に命捧げた印しゆえ〜

2つ目は連隊に〜レンジャー小隊の印し〜

3つ目は我が母に山の息子の思い出に〜

4つ目は恋人に我が初恋の思い出に〜

最後のそれはまきお山の岩場聳えるあの尾根に〜

思い出残る〜

あの山に〜



皆でこんな歌を唄うのです…


しかし今、文字にしてよくよく見ると…

恋人さんも骨を送ってこられても〜って感じですね



テレビもラジオも無い部屋でしたが観る時間も無いし観たいとも思いませんでした


毎日疲れきっていますから

眠くて 眠くて仕方なかったのです


さぁ〜 これから

前半の体力調整が始まるのでした…



始まってしまった体力調整



グランドに整列した私達28名

教官の号令が…今から体力調整訓練を実施する



1の1腕立て伏せ用意



ここで体力調整のルールをご説明します

色々な訓練が有り

各訓練には

1の1

1の2

1の3

2の1

2の2

2の3と段階が設けられており1日ずつランクアップされていくのだった



全員が腕立て伏せの状態で助教の号令を待つ…

助教が いち



私達は腕を曲げ地面に顔ギリギリまで身体を沈めて

折り返し身体を持ち上げる

助教が にー



身体を沈め持ち上げる

助教が さん



身体を沈め持ち上げる

助教が にー



んっ



何で



言い間違えたのか?



身体を沈め持ち上げる


助教が さん



助教が よん



助教が にー



ギャ〜また間違えた



よんの次ごーやろー



小学校へ出直してこい!



助教が さん



助教が さん



うわぁ〜ダブっとるやないか〜い



お分かりでしょうか?


こうして腕立て伏せの数を増やしているのです



1の1の腕立て伏せ回数はたったの10回なのに…

最終的に腕立て伏せを100回以上もしました



これが1の1



これ〜5の3なら1500回



殺す気か〜



一回一回全員が出来るまで待たなければいけなく



待ってる時間も腕立て伏せの状態なのです



腕がパンパンに張る



出来ない奴を待つ度に精神が



はよ〜やれや〜



ムカムカくる



お前の為に俺ら苦しんでるのに〜ボケ



皆の心の中に怒りが



出来ない訓練生に助教が怒鳴りまくる



しっかりせんか〜!



鼻糞



こんなぐらいで情けない奴じゃー!



お前みたいなお荷物早く辞めろー!



邪魔なんじゃー!



はよーやれよー!



お前の為にみんな待っとるんやぞー!



もう辞めろー



帰れー



助教の罵声が豪雨の様に浴びせられる



歯を食いしばり遅れた訓練生がフラフラになりながら身体を持ち上げた…



すぐさま



しっかり身体を上げんかー



お前みたいなお荷物はよーはよー辞めろ



助教が はちー



皆必死で身体を沈めて持ち上げるが

遅れた訓練生が…

身体を持ち上げられない

助教が…またお前や〜



無理や無理や



はよー止めて楽になれやー



また、みんなお前のせいでしんどい思いしとるやないかい



止め止め辞めろやー



助教の罵声に苦しい自分より仲間の出来ない訓練生が可哀想に思えたその時…



出来ない訓練生のバディーが…



ガンバレ



出来る



もうちょっとや



お前なら、絶対出来るガンバレ



相棒にエールを大声で贈ったのだ



それに奮起した遅れた訓練生が必死で身体を持ち上げた



それを見ていた私達も心で知らず知らずに



先ほど恨み節を考えてたのも忘れて応援していたのだ



何とか腕立て伏せ1の1が終了すると



間髪おかず…

教官が



1の1腹筋用意

ドヒャ〜



き…休憩ないの〜



助教が私に



コラッ〜まぬ



隠れて休むなー



はよー腹筋の体制とらんかー鼻糞



あっ



は…はい すみません



助教が いち



御想像の通り



腹筋も腕立て伏せと同様に数を間違えたりダブったりで100回以上でした



その後銃を肩に持ち腕を上げての屈伸



これも100以上



懸垂や足上げなどなど休憩など無く連続でぶっ通しでやりました



これ1の1なら明日は1の2なら何回する事になるの



これ毎日増え続けるの



死ぬ死ぬ死ぬ〜



やっていけるんか?



レンジャー訓練


訓練が終わると、皆、話す力も無く項垂れながら官舎へ重い体を引きずる様に帰って行くのでした・・・


重い 空気が重かったです



つづく…



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